2020年07月01日号
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artscapeレビュー

日本の美を追い求めた写真家・岩宮武二 京のいろとかたち

2020年04月01日号

会期:2020/01/04~2020/03/31(02/28〜03/31休館)

フジフイルム スクエア写真歴史博物館[東京都]

日本の写真表現の歴史において、岩宮武二(1920〜1989)の評価は十分なものとはいえない。ひとつには、彼が関西を中心に活動していたため、東京を中心とする写真ジャーナリズムではどうしても扱いが小さくなりがちだったということがある。もうひとつは、彼の仕事がコマーシャル・フォトからドキュメンタリーまでかなり幅広く、多面的だったので、焦点が絞りにくいということもあるだろう。だが、森山大道を写真の世界に導いたのが岩宮だったということも含めて、彼の写真の世界をもう一度見直し、きちんと評価していく時期が来ているのではないかと思う。

今回展示されたのは、岩宮が1950〜70年代にかけて、京都の風物を「いろとかたち」をテーマに撮影したシリーズである。全2巻の『かたち 日本の伝承』(美術出版社、1962)、『京 Kyoto in KYOTO』(淡交新社、1965)などの写真集にまとまる京都のシリーズは、日本人の伝統的な美意識を、仏閣や茶室などの造形美を通じて探り出そうとしたものであり、同時期の石元泰博の仕事との共通性を感じる。だが、石元のニュー・バウハウス仕込みの厳格な造形的アプローチと比較すると、岩宮の写真には、ほのかな色気のようなものが漂っており、日本の湿り気のある風土に根ざした空気感が伝わってくる。とはいえ、ほかの岩宮の作品にも共通する、背筋をぴんと伸ばした姿勢のよさが、どの写真からも感じられ、見応えのある作品が多い。

岩宮はドイツのオットー・シュタイネルトが企画した「Subjektive Fotografie2」展(1954年)にも出品しているし、1970年代以降に集中して撮影した「アジアの仏像」シリーズも、クオリティの高いいい仕事だ。ちょうど、今年は岩宮の生誕100年の記念すべき年でもある。本展をひとつの契機として、その全体像を概観できる大規模な回顧展を開催するべきではないだろうか。

2020/02/24(月)(飯沢耕太郎)

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