artscapeレビュー

白髪一雄

2020年04月01日号

会期:2020/01/11~2020/03/22(02/29〜03/22は臨時休館)

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

戦後日本の前衛美術の流れにおいて、大きな役割を果たした具体美術協会の中心メンバーだった白髪一雄の回顧展は、圧倒的な迫力と存在感を備えた代表作がずらりと並んでいて見応えがあった。古賀春江を思わせる幻想画から、次第に抽象性を強め、画面に全身で没入する「フット・ペインティング」に至る道筋も興味深かったのだが、ここでは別な角度から白髪の仕事を捉え直してみたい。

展示の最後に、《緑のフォトアルバム》、《青いフォトアルバム》、《赤いフォトスクラップブック》と題された写真帖3冊が出品されていた。ガラスケースの中なので、ひとつの見開きのページしか見ることができないのだが、そこに貼られていたポートレートやパフォーマンスの記録写真の質はかなり高い。また、年表の1956年の項に《レンズ》という作品が紹介されている。板を削った窪みの底にレンズを嵌め込んだ作品だが、その解説に白髪は「無類のカメラ好き、カメラマニア」だったと記されていた。白髪が具体美術協会第1回東京展(1955)に参加したときのパフォーマンス《泥に挑む》の記録写真にも、写真作品としての表現性の高さを感じる。それらを考え合わせると、白髪の仕事を写真という切り口で再検証することも可能なのではないだろうか。

具体美術協会のメンバーたちは、白髪の「フット・ペインティング」のように、完成作だけでなく、そのプロセスを重視する作品を多数残している。有名な村上三郎の《紙破り》のパフォーマンスもその一例だろう。パフォーマンス作品においては、写真あるいは映像による記録だけが、唯一の存在証明となることが多い。写真と前衛美術との関係に、新たな角度から光を当てる展覧会も考えられそうだ。

2020/02/28(金)(飯沢耕太郎)

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