2020年07月01日号
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artscapeレビュー

岡﨑乾二郎 — 視覚のカイソウ

2020年04月01日号

会期:2019/11/23~2020/02/24

豊田市美術館[愛知県]

津から名古屋をスルーして豊田へ。最終日だから人は多めだろうと思ったけど、こんなに混んでるとは予想外。新型コロナはどうした? そういえば昔、トヨペット・コロナってあったなあ。それはともかく、人出は「諏訪直樹展」と対照的だが、内容もある意味、対照的かもしれない。

岡﨑は諏訪よりひとつ下だが、ほぼ同世代であり、2人ともBゼミに学んだので、美術に対する問題意識も共有していたはず。ただデビューしたのは岡﨑のほうが数年遅く、1980年代に入ってからのこと。めまぐるしく変化した70年代末から80年代初頭にかけての数年の違いはけっこう大きい。デビュー作は「あかさかみつけ」と呼ばれるシリーズで、1階の大きな展示室の壁にぐるりと40点ほど並べられている。あらためて見ると、初めからミニマリズムもコンセプチュアリズムも超えて完成されていたんだと感心した(最初一つひとつ違う作品だと思ったら、よく見ると配色の異なる「あかさかみつけ」と「おかちまち」の2種類だけだった)。

このシリーズ、ポリプロピレンなどのボードにさまざまな切れ目を入れ、折ったりつなぎ合わせたりして彩色したレリーフ状の作品。これは型紙のパターンを参照したともいわれるが、1枚の紙を切ったり折ったりするプリミティブな図画工作に遡る作業とも言え、造形の原点に立ち戻るところから表現を再構築しようとした点で、諏訪の初期と共通するものがある。だが、明らかに岡﨑のほうが自由度が高く、その意外なほどの小ささとも相まって、70年代とはっきり一線を画す軽快さが感じられるのも事実。その意味でこのシリーズは80年代初頭における現代美術の最適解とも言え、これによって岡﨑はニュー・ウェイブの旗手と目されていく。

ちなみに「あかさかみつけ」のサイズは、縦横ともに30センチに収まる程度の大きさ。この日は人が多く、ほぼ目の高さに展示されていたせいか、人間の頭と紛らわしかった。ひょっとしたらこれ、頭じゃね? と、ふと思った。というのも、そのあとに展開していく長ったらしいタイトルの2枚組の絵画が、基本的に人体サイズが多く、そこに描かれるフォルムも内蔵や筋肉を思い出させるからだ。ま、それは勝手な想像だが。

都合により美術館には1時間足らずしか滞在できなかったため、残念ながら2、3階の展示室はゆっくり見られなかった。なので1階の展示室を見る限りだが、やっぱりデビュー作の「あかさかみつけ」が最高傑作で、これを超える作品はないんじゃないかと思った。ここは諏訪と正反対だ。実際「あかさかみつけ」は1981年に初めて発表して以来、40年近く断続的につくられているのだから、これはもう「無限連鎖するレリーフ」と言ってもいいかもしれない。

2020/02/24(月)(村田真)

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