2020年12月01日号
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artscapeレビュー

『AKIRA』IMAX版

2020年06月15日号

1カ月半ぶりの映画鑑賞は、いち早く緊急事態宣言が解除された宮城県におけるTOHOシネマズ仙台となった。新作はわずかで、代わりに『ベン・ハー』、『オズの魔法使』、『タワーリング・インフェルノ』、『ブレードランナー』、『シン・ゴジラ』、『君の名は。』などの古典的な名作をずらりと揃えた最強のラインナップで興味深い。館の再開初日の朝だったので、待ちきれなかった多くの映画ファンが詰めかけているかと思いきや、実際には閑散としていた。ソーシャル・ディスタンスをとるため、半分の座席は使用不可とし、市松模様の配置パターンでチケットを販売していたが、最大のキャパのスクリーン6は364席に対し、わずか約10名の入りという超低密度である。





再開初日の朝なのに券売機前も閑散とした映画館


さて、筆者が鑑賞したのは、漫画中心で読んでおり、映画版はヴィデオで観ていた『AKIRA』だ。そしてIMAX版の『AKIRA』の凄さに驚愕することになった。もちろん、大スクリーンの上映に耐える圧倒的な細部の描写ゆえである。テレビの画面では確認できない、様々な情報がぎっしりと詰め込まれていた。

1988年に公開された『AKIRA』は、それまでの映画史の記憶を踏まえた作品であると同時に(『マッドマックス』、『スキャナーズ』、『トロン』、『ブレードランナー』など)、32年後だからこそわかる、これに続く後発の映画への影響力の大きさ(『新世紀エヴァンゲリオン』や、アニメにおける幻想的なシーンなど)を確認できるものだった。

まだ生々しかった学生運動の記憶、2.26事件へのオマージュを感じる一方で、鉄雄が戦車と対峙する終盤のシーンは、1989年の天安門事件を予見したかのようだ。そして現実になった東京オリンピック2020とその延期も、コロナ禍の今だからこそ、重く受けとめたい設定である。音楽は芸能山城組が印象的だが、途中の未来都市のシーンにおいて、暁テル子の楽曲「東京シューシャインボーイ」(1951)が挿入歌として使われていることも発見した。渋い選曲である。ともあれ、最初の公開から長い時間を経ても、未来の鑑賞者に多くの気づきを繰り返しもたらす『AKIRA』は、やはり古典的な名作と呼ぶにふさわしい。


左上:「AKIRA 4Kリマスター」IMAX上映ポスター
[© 1988マッシュルーム/アキラ製作委員会]

2020/05/15(金) (五十嵐太郎)

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