artscapeレビュー

角文平 The garden / Secret room

2021年07月01日号

会期:2021/05/21~2021/06/20

アートフロントギャラリー[東京都]

壁に、龍安寺の石庭みたいな枯山水のレリーフが取り付けられている。《The garden》という作品だ。石の周りに波紋のような同心円までつくられているが、枯山水にしてはずいぶん色がケバいと思ったら、石の部分はボルダリングのホールドが使われているではないか。壁面を登っていくときにつかむ出っぱったアレ。色もかたちもサイズもさまざまだけど、もともとホールドは岩の出っぱりを想定しているのだから、こうやって使うのは理にかなっている。ちなみに、ボルダリングがオリンピック競技になったのは今回からだそうで、時宜にかなった企画というか、機を見るに敏というか。これからボルダリングを見るたびに枯山水を思い出しそう。

奥の部屋は《Secret room》というインスタレーション。暗い部屋の中央にアンティークな照明が床から数十センチの高さに垂れ下がり、その周囲に置かれたテーブルや柱時計など年季の入った家具を照らし出している。床には同心円の書かれたカーペットが敷かれ、古びたロボット掃除機が1人?で右往左往している。「ゲンビどこでも企画×ゲンビ『広島ブランド』デザイン スペシャル公募2020展」に出品された作品の東京バージョンということで、ときおり点灯する照明は核爆発を、床の同心円は爆心地からの距離を暗示しているようだ。核戦争後、人のいなくなった世界にロボット掃除機だけが部屋を清掃し続けるという悪夢を表した作品。どちらも文明批評としてきれいにまとめているが、手際がよすぎて器用貧乏にならないか気がかりだ。



[筆者撮影]


2021/06/13(日)(村田真)

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