2022年10月01日号
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artscapeレビュー

南相馬の震災10年 岡部昌生 余震

2021年07月01日号

会期:2021/06/01~2021/06/06

トキ・アートスペース[東京都]

広島、夕張、パリ、ローマなどさまざまな歴史を刻む場所を、紙に鉛筆で擦りとるフロッタージュの手法で記録してきた岡部昌生の個展。今回は東日本大震災後から福島県南相馬市に足を運び、被災した建造物や石碑などの表面をフロッタージュで写しとってきた作品を展示している。

写しとられたのは、破壊された巨大な防波堤の断面(高さが5メートルくらいあって会場に収まらないので横倒しに展示)、津波に襲われた小学校の教室の床、災害復興祈願で建てられた「おらほの碑」をはじめとする石碑など。鉛筆で擦りとるのではなく、紙を置きっぱなしにして雨水や砂、風、日光などの自然に表面を擦らせた《風の、光の、空気のフロッタージュ》もある。フロッタージュは物(ブツ)の表情を直接写しとるものだから、絵画や写真と違って対象を突き放した描写はありえず、物質感をダイレクトに伝える強度がある。ひょっとしたら、その場に付着していたかもしれない放射能や新型コロナウイルスまで写しとってきちゃったんじゃないかってくらい臨場感があるのだ。ちょっとたとえが悪かったですか。

同展はこの春、南相馬市博物館で開かれた「南相馬の震災10年」の巡回展。タイトルに「余震」を加えたのは、3.11から10年目の今年2月に起きた最大震度6強の福島県沖地震(震度6強といえば烈震だが、そんな地震あったっけ? てくらい珍しくなくなったことに驚く)のことを指すようだが、「本震で歪んだ地殻を安定させ整えようとするのが余震だとすれば、ときに、痛みや怖れを想起させる文化、芸術も人間の歪みを緩やかに回復させる余震なのだと思います」という、福島県立博物館の川延安直氏の言葉に感化されてのことでもあるだろう。



展示風景[筆者撮影]


2021/06/01(火)(村田真)

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