artscapeレビュー

山田谷直行「Kona Chatta Yoo」

2022年10月15日号

会期:2022/09/06~2022/09/18

Roonee 247 Fine Arts[東京都]

「Kona Chatta Yoo(こーなっちゃったよー)」という写真展のタイトルは、なかなか実感がこもっている。試行錯誤を繰り返すうちに、自分でも思っても見なかったような方向に作品が動いていく。戸惑いながらも、ワクワク感が高まってくる感じが、タイトルからよく伝わってきた。

とはいえ、今回、山田谷直行が展示した作品が「写真」という範疇におさまるのかといえば、ややむずかしいところもありそうだ。山田谷はプリントの用紙に徹底してこだわる。出ヶ原和紙、因州和紙、阿波和紙、ついには材料を購入して自作の和紙まで作ってしまった。さまざまな手法、技法も試みている。硝酸銀プリント、サイアノタイプなどの古典的な銀塩技法だけでなく、インクジェットプリントも使用し、それに蜜蝋、墨、紙粘土なども加えて、なんとも形容しがたい映像+物質の混合体のような作品を制作する。ほとんど抽象画のような作品も多いが、写真的なリアルな描写がだいぶ残っているものもある。まさに「Kona Chatta Yoo」としかいいようのない作品群だ。

ひとつのスタイル、技法に集約させるという選択肢もあったと思うが、山田谷はあえてバラバラに引き裂かれたような作品を会場いっぱいにちりばめていた。そのことで、観客もまた、山田谷とともに生成しつつある作品制作の現場に立ち合っているように感じるだろう。紙という支持体の可能性をとめどなく広げて、むしろ紙の質感を元にして写真の方向性を決めていこうとしているようにも見える。作品一点一点のサイズはそれほど大きくないので、それらをつなぎ合わせて、巨大な作品に仕上げるのも面白いかもしれない。

2022/09/14(水)(飯沢耕太郎)

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