artscapeレビュー

百々俊二・新・武写真展「Dream Boat」

2022年10月15日号

会期:2022/08/12~2022/10/08

キヤノンギャラリーS[東京都]

親子で写真家という例はないわけではないが、父親と二人の息子が自分の写真の世界を追求し続けつつ、それぞれ高い評価を受けるというのはとても珍しいことではないだろうか。百々俊二(1947-)、百々新(1974-)、百々武(1977-)の三人展を見て、あらためて彼らの写真家としての営みに感銘を受けた。1996年に写真集『楽土紀伊半島』(ブレーンセンター)で日本写真協会年度賞を受賞して以来、数々の写真賞に輝いている百々俊二はいうまでもないが、新は2012年に『対岸』(赤々舎)で第38回木村伊兵衛写真賞を受賞し、武も2009年に写真集『島の力』(ブレーンセンター)を刊行してから、精力的に写真展を開催し、写真集を出し続けてきている。

今回の展示は、彼らの代表作を集中して見せるのではなく、初期作品から近作まで100点以上を総花的にちりばめたものとなった。一見バラバラになりそうだが、全体的な印象としてはむしろ統一感がある。モノクローム、カラー、大判カメラ、中判カメラ、小型カメラ、さらにポラロイドに至るまでさまざまな機材、手法を使いこなしているにもかかわらず、三人とも向いている方向は同じであるように見えてくるのだ。「人間」という不可思議な存在への、飽くなき興味とアプローチ、あくまでも自らの「体験」に徹底してこだわる姿勢、好奇心と探究心と冷静な判断力との絶妙なバランスなど、やはり親子であり、同じ血が流れているということだろう。

とはいえ、むろんそれぞれの作風の違いも浮かび上がってきていた。百々俊二が被写体に対応する振幅が最も大きく、百々新が冷静な距離感を保ち、百々武がその中間といえる。親子三人での展示は、2012年に尾仲浩二が主宰するギャラリー「街道」で開催して以来12年ぶりということだが、これで終わらせるのはもったいない。また機会を見て、ぜひ「Dream Boat 2」展を実現してほしい。たとえば、三人が同じテーマで撮影した写真の展示なども見てみたいと思う。なお、展覧会に合わせてCase Publishingから同名の写真集が刊行されている。

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