artscapeレビュー

うつゆみこ「I Call Nature, Nature Calls Me」

2022年10月15日号

会期:2022/09/15~2022/10/09

コミュニケーションギャラリーふげん社[東京都]

うつゆみこが、今回の展示に合わせて刊行したリーフレットに「私は小さな頃から、何かを作り続けてきた」と書いている。たしかに彼女の仕事を見ていると「画材、粘土、毛糸、布、針金など」さまざまな素材、手法を用いて作品を生み出していくという行為が、ほとんど彼女の生き方そのものと結びついていることがよくわかる。どの作品を見ても、「何かを作り続け」ることへの、強い思いがやや痛々しいほどに伝わってくるのだ。

だが、そのように次々に制作を続けいくと、収拾がつかなくなることもありそうだ。時には展示の内容があまりにも過剰すぎて、目移りしてしまうことにもなる。その意味では、今回の展示の出品作は、これまでのようなオブジェや画像を組み合わせたコラージュ作品だけではなく、必ず人間を含む「生きもの」を入れ込むというルールを設定したことことで、統一感が生み出されていた。「生きもの」を撮影するのは、オブジェよりもコントロールがむずかしいので、画面の緊張度がより高まってきている。舞台設定やライティングにも気を配っており、より被写体の立体感も強調されていた。

この連作はぜひ写真集にまとめて欲しい。私家版のZineは何冊も出ているのだが、本格的な写真集は『はこぶねのそと』(アートビートパブリッシャーズ、2009)以来刊行されていないからだ。今回の展覧会では、展示会場の階下に小さなスタジオが設営され、「うつゆみこによるポートレート撮影会」も行なわれていた。モデルは背景の布と小道具を選んで、彼女の作品世界のなかに入り込むことができる。筆者も撮影してもらったのだが、彼女が実際にどんなふうに作品を作っているのかがわかって、なかなか面白い体験だった。

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うつゆみこ「はこぶねのそと」|飯沢耕太郎:artscapeレビュー(2009年02月15日号)

2022/09/25(日)(飯沢耕太郎)

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