artscapeレビュー
磯和璉子「逢瀬」
2023年02月15日号
会期:2022/12/27~2023/01/16
ニコンサロン[東京都]
ニコンサロンでは、時々ユニークな経歴の写真家の写真展が開催されるが、三重県出身の磯和璉子もそんなひとりである。磯和は1981年に留学のため渡米し、1983年からは、ニューヨークを拠点に、自然関係のドキュメンタリー映像を制作・配給する仕事にかかわった。2006年に帰国。ふとしたきっかけから写真撮影に目覚め、定期的に展覧会を開催するようになった。
今回の展示のテーマは「石」である。宮崎県、奈良県、群馬県、宮城県などの渓谷や採石場に足を運び、そこで目に止まった岩石にカメラを向けた。撮り方はストレートで、光や構図にこだわるというよりは、被写体のありようをそのまま受け容れ、抱き寄せるようにしてシャッターを切っている。それらの岩石が、どのようにその場所に姿をあらわしたのか、DMに使われた写真の結晶片岩といった名称も含めて、地質学的な知識もそれなりに身につけているようだ。だが、そのことにこだわるよりも、「石」との出会い=「逢瀬」を大事にし、あまり作為を感じさせないように撮影しようとする姿勢が一貫しており、心揺さぶる、強いパワーを放つ写真群となっていた。
カメラを通して「石」と向き合うことは、いまや磯和にとってライフワークになりつつあるのではないだろうか。「石」との対話から得るものが大きいことが、かなり大きめにプリントして展示された23点の出品作からしっかりと伝わってきた。この仕事はさらに続けていってほしい。豊かな膨らみを備えたシリーズとして成長していくことが、充分に期待できそうだ。
公式サイト:https://www.nikon-image.com/activity/exhibition/thegallery/events/2022/20221227_ns.html
2023/01/09(月)(飯沢耕太郎)