artscapeレビュー

岡﨑ひなた「空蝉ミ種子万里ヲ見タ。」

2023年06月15日号

会期:2023/05/23~2023/06/24

ガーディアン・ガーデン[東京都]

リクルートが主催する写真「1_WALL」は、昨年の第25回公募で終了することになった。前身の写真「ひとつぼ展」から数えると、30年という長きにわたって続いていたわけで、やはり同時期にスタートしたキヤノン「写真新世紀」もまた2021年に終了したことも含めて、感慨深いものがある。

その最終回の公募でグランプリを受賞した、岡﨑ひなたの展覧会が、ガーディアン・ガーデンで開催されている。2002年生まれ、20歳という若さでの受賞は最年少記録だという。それだけでなく、その作品世界のスケールの大きさ、将来性を考えると、まさにラストランナーにふさわしい受賞といえるだろう。

岡﨑が撮影しているのは、生まれ育った和歌山県田辺市中芳養 なかはやの村落とその周辺の地域である。海と山のあいだに位置するこの地域には、日本人にとっての原風景が広がっている。とはいえ、土地の恵みを収奪して資本化していく現代社会の営みは、もはやこの地域にも及びつつある。岡﨑は「獣、植物、人、魚、海、山」などを大胆かつ的確なカメラワークで捉えつつ、少しずつ姿を変えていく「変化と普遍の狭間」の状況をしっかりと写しとろうとしている。大小の写真を配置した今回の展示にも、彼女の才能の輝きがよくあらわれていた。

次は、ぜひ本作を写真集にまとめてほしい。ただその場合には、直観に頼るだけではなく、より統合的、構築的な視点が必要となるだろう。写真だけではなく、テキストをどのように編み上げていくかも大事になる。本展の、まさに「声明」を思わせるタイトルを見ても、岡﨑にはコトバを操る語り部としての資質もありそうだ。次の展開を期待したい。


公式サイト:http://rcc.recruit.co.jp/gg/exhibition/ph25-hinata-okazaki/ph25-hinata-okazaki.html

2023/05/23(火)(飯沢耕太郎)

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