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立川清志楼「第一次三カ年計画(2020-2023)最終上映会」

2023年06月15日号

会期:2023/06/04(日)

BUoY[東京都]

立川清志楼は、2020年度の写真新世紀で優秀賞(オノデラユキ選)を受賞した。それをひとつの契機として、「第一次三カ年計画」という破天荒なプロジェクトを思いつく。ひと月に5本、つまり年間60本×3=180本の映像作品を制作するというものだ。実際にはそれ以上の200本の作品ができあがり、Part183~ Part200の作品、及び200本の作品をダイジェストして繋いだfilm collection remix(上映時間:33分)を一挙に見せる「最終上映会」が開催された。

立川の制作活動の背景には、デジタル化によって映像作品を大量に生産できる環境が整ったことがある。だがその状況を利用するかどうかは、作家の資質と関わることであり、一概に作品本数が増えるとは限らない。立川は、それぞれの作品に実験的要素を無作為的に取り込んでいくことで、量を質に転化するシステムを構築しようとした。そのことはかなり成功したのではないだろうか。

撮影されているのは、動物園や街頭の群衆など、日常的な場面であり、定点観測、画面の分割、焦点の変化、画像の加工などの手法を用いることはあっても、基本的にはストレートな撮影・編集を貫いている。主観的な世界観を表出するよりは、現実世界を丹念に観察し、客観的に描写することがめざされており、作品制作の姿勢としてはスナップ写真に非常に近い。固定カメラが多用されていることも含めて、「動く写真作品」としての側面が強いように感じた。

2020~2023年、つまり「コロナ時代」の様相がありありと浮かび上がるいい仕事だが、これだけの量を一挙に見せるのはなかなかむずかしそうだ。単純な「remix」ではなく、映像作家としての編集能力を発揮した「長編」の制作も考えていいのではないだろうか。



展示風景



会場 公式サイト:https://buoy.or.jp/program/20230604/
立川清志楼 公式サイト:https://tatekawa-kiyoshiro.com/

2023/06/04(日)(飯沢耕太郎)

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