artscapeレビュー
Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会 2023
2023年12月01日号
会期:2023/10/20~2023/10/30
うめきたSHIPホール[大阪府]
毎年、大阪駅前のうめきたSHIPホールで開催されるU-35、すなわち「35歳以下の若手建築家による建築の展覧会」は、回を重ねるにつれ展示の手法が洗練されてきており、楽しみにしている秋の企画のひとつだ。今回は実寸大やモックアップの展示物が増え、さらにパフォーマーの実演まで加わり、来年からのハードルがぐっと上がった。主催側や参加者同士での展示のスタディや意見交換が行なわれたことが、こうした結果をもたらしたようだ。そして出品した7組がいずれも異なる個性をもちながら、確かに現代の方向性を感じさせる充実した内容である。
記念シンポジウムでのプレゼンテーションと討議を経て、ゴールド・メダルに選ばれたのは、ともに石上純也事務所出身であり、そのセンスを継承しているアレクサンドラ・コヴァレヴァ+佐藤敬だった。彼らの展示では、会場の広さを見事に生かし、ほとんど板状になった極薄のプロポーションをもつ住宅《ふるさとの家》の空間が実感できる。ちなみに、東京ミッドタウンのガーデンでも、彼らの繊細な屋外インスタレーション《風の庭》を展開しているタイミングだった。
ほかの参加者にも触れたい。昨年のゴールド・メダルに輝いた佐々木慧は、今度の関西万博のプロジェクトを下敷きにリサイクル展示什器を使う。またデジタル技術によって、石や竹などの自然素材の新しい可能性を引き出す大野宏も、関西万博に参加する若手建築家のひとりである。
ガラージュ(小田切駿+瀬尾憲司+渡辺瑞帆)は、演劇祭が行なわれる豊岡において建築と映像と舞台が絡み合い、時間と身体性に肉薄するプロジェクトを紹介していた。会場でパフォーマーが演じたり、象設計集団の《ドーモ・キニャーナ》(1992)の改修など、クセが強い建築への介入も興味深い。最若手の福留愛は、iii architectsというユニットを組んで、環境と人のふるまいを手がかりにした台湾と沖縄での生活空間を提示する。
枡永絵理子は、陶芸の技術による土壁のボリュームを実家の改修に挿入すると同時に、母屋を外に拓くことを試みる。そして風景研究所(大島碧+小松大祐)は、ありえたかもしれない建築=膨大なスタディによって形を探求していたことが印象的だった。それは近年では珍しい、歴史的な建築の叡智とも接続する行為になるだろう。
Under 35 Architects exhibition 2023:https://u35.aaf.ac/index_2023.htm
2023/10/20(金)(五十嵐太郎)