artscapeレビュー

大駱駝艦「シンフォニー・M」

2009年03月01日号

会期:2009/02/19~2009/02/22

世田谷パブリックシアター[東京都]

壺中天という名の弟子たちが周囲を固めてはいるものの、本作は麿赤兒のソロというのが近い。麿の魅力はプレゼンスにある。大きな顔をさらに大きな髪が際だたせる。なにかをしていなくとも存在感に圧倒される。存在感だけが存在しているような佇まいで、しかし振りはきわめてミニマル、ゆったりとした反復的動作が続く。動きの繋がりに生じる間とかリズムより、存在感が舞台を駆動させる。ダンスというより演劇的。弟子たちが懐中電灯だけで麿を照らしたり、巨大な白い洞窟のごときセットが登場したり、仕掛けのアイディアは豊かな一方、パフォーマーのなかからはっとするズレは起こらない。その分強調される演劇性は、白い洞窟の奥へ落下(?)するラストシーンで、赤子のように泣き叫ぶ麿とその周りを囲む白塗りの若いダンサーたちとの関係を際だたせる。とくに、カーテンコールで弟子のひとりが麿に観客への挨拶を指示するあたりは、この舞踏団それ自体を演劇化しているように見えた。

2009/02/21(土)(木村覚)

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