artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

古代ギリシャ─時空を超えた旅─

会期:2016/06/21~2016/09/19

東京国立博物館[東京都]

史上最初にして最強の美を生み出した古代ギリシャの展覧会。なのにミロのヴィーナスもなければ、サモトラケのニケもない。もちろんパルテノン神殿を飾っていた大理石彫刻群も来てない。それらはみーんな列強が持っていってしまった。だから今回はギリシャ国内の美術館・博物館が所蔵する、残りものには福がある展覧会なのだ。構成は「古代ギリシャ世界のはじまり」から、「幾何学様式~アルカイック時代」「クラシック時代」「古代オリンピック」、そして「ヘレニズムとローマ」までの8章立て。初めのほうは壷や装身具のような小物や、ヘンリー・ムーアみたいな人物像が多くていささか退屈だが、やがてフレスコ画やモザイク画が現れ、壷絵もより精巧になり、華やかな金細工も増え、人物像も徐々にリアルになってくる。「古代オリンピック」に1章が割かれているのは、なぜいま東京で「古代ギリシャ」展が開かれるのかの答えになっている。つまり今年がオリンピックイヤーだからであり、東京が次の開催都市であるからだ。

2016/06/20(月)(村田真)

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佐藤香菜展「透明な境界線」

会期:2016/05/27~2016/06/24

第一生命ギャラリー[東京都]

鹿、馬、ヤギなどの動物と植物のコラージュ的な組み合わせ。背景描写はほとんどないので日本画的でもある。ところどころ絵具をベッタリ塗ったり滴らせたり、あるいは花や身体の一部を刺繍で表現したり。と書いて、最近こういうの多いなあとあらためて思う。背景描写を省いた日本画的空間、全体に薄めで局所的に絵具をこってり盛り上げるテクスチャー、画面の一部に施される刺繍など。でもこれらをすべて盛り込んでる例は珍しい。工芸的になりそうなのにならないのはそのせいかも。

2016/06/20(月)(村田真)

Unveiling vol.1

会期:2016/06/03~2016/07/02

SNOW contemporary[東京都]

西麻布の交差点に移転して初の展覧会で、出品は飯沼英樹、日野之彦、SWOONら6人。SWOONは古くて小さな木の扉に、左右対称に切った白い紙を貼り付けた作品など2点を出している。いかにもストリートアーティストが売り物をつくりました的な小品ではあるけれど、のどから手が出そうになって退散。

2016/06/17(金)(村田真)

池菜月「パラミツオレンジ」

会期:2016/06/11~2016/06/19

ギャラリー・サイトウファインアーツ[神奈川県]

「8日間のアートフェア」と同じ町内で同時開催。映画のシーンや映画に登場するさまざまな要素をコラージュのように紙に油彩で描いている。パネルに水張りして周囲をテープでとめて描き、はがしたテープの跡が画面(スクリーン?)の枠になっているのがおもしろい。作者がいたので、なんで紙に描くのか聞いてみたら、理由はふたつあって、ひとつは紙はフラットなので筆跡が残りやすいから。もうひとつは、映画の薄っぺらさを表わすのにちょうどいいから。でも紙だと売りにくいんじゃないかしら。

2016/06/14(火)(村田真)

8日間のアートフェア vol.2

会期:2016/06/11~2016/06/19

高架下スタジオ・サイトAギャラリー[神奈川県]

黄金町のレジデンスに滞在中のアーティスト15人によるアートフェア。大半が女性で、作品は絵画、写真、彫刻と多彩。BankARTのオープンスタジオにも出ていた岩竹理恵の樹木の写真がいい。背景を白く飛ばして木を1本だけ浮き上がらせている。セピア色のモノクロ写真で、ちょっとカール・ブロスフェルトを思い出させるなあ。木漏れ日のような淡い光を捉えた井上絢子の絵もそそられる。背景が黒い夜の木漏れ日(木漏れ月?)もあって惹かれるのだが、なにか足りない気もする。画面に引っかかりというか抵抗感がなく、視線が上滑りしてしまうのだ。結局なにもカワズにカエル。

2016/06/14(火)(村田真)