artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

SICF17

会期:2016/05/01~2016/05/04

スパイラルホール[東京都]

スパイラル・インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル(SICF)も17回目。2000年に始まったんで「17」なんだろうけど、今年は2016年だからややこしい。というのも下のスパイラルガーデンでやってる「SICF16 受賞者展」を、今年の受賞者と間違えそうになったからだ。1回休んで年号と一致させるのはどう? もひとついわせてもらうと、会期わずか4日間を2グループに分けて50組ずつ2日間ずつしか展示しないので、すべて見るには4日間以内に2回見に行かなくてはならない。こりゃ不便だ。まとめて文句を書いたのは、語るに値するクリエーターが少なかったからだ。注目したのは二人だけ。ひとりは、静物画みたいな絵から絵具を削り取ったキャンバスや、紙をはがしたパネルを並べた野内俊輔。明らかに周囲から浮いていたが、そのことも含めてこういうの好きだ。もうひとりは、ソラマメやチクワを原寸大で描いたり、小さな布袋を「あぶらあげ」と称したり、タイルの上に富士山のせて「ポケット銭湯」をつくったりしている橘川由里絵。セコさの向こうに高橋由一の影が見える。

2016/05/02(月)(村田真)

大岩オスカール「世界は光に満ちている」

会期:2016/04/28~2016/05/22

アートフロントギャラリー[東京都]

相変わらずだなあ。都市や環境への批判的まなざしを、だまし絵みたいな細工を施してユーモラスに描き出す。この基本姿勢はいまも、20年以上前に東京で発表し始めたころとほとんど変わってない。大してうまくもなってないが、ヘタにもなってない。変わりばえしないともいえるが、一貫した強い意志を保ち続けていることに驚く。わずかに変わったとすれば、筆跡が強調されて意味だけでなく絵画性が強められたことだろうか。本人も相変わらずだ。顔も体型も見た目には20年間ほとんど変わっていない。

2016/04/28(木)(村田真)

世界遺産 ポンペイの壁画展

会期:2016/04/29~2016/07/03

森アーツセンターギャラリー[東京都]

そもそも「壁画展」などグラフィティの展覧会と同じで矛盾のかたまりだが、それでも「ポンペイの壁画展」は数年にいちどの頻度で開かれている。ならば「ラスコーの洞窟壁画展」も企画してほしいと思っていたら、今秋科学博物館で開かれるそうだ。といっても原寸大レプリカや3D映像がメインらしいが。話を戻すと、日本に来ているポンペイの壁画もひょっとしたらレプリカだったりして。いや疑ってるのではなく、それほど色がきれいなのだ。昔見たポンペイの壁画はもっとひび割れだらけで、色彩もくすんでいたように感じるのは気のせいか。特に「エジプト青の壁面装飾」と呼ばれるフレスコ画の青(水色)と赤の対比はこの上なく美しいし、また、土色だけで群像を表現した《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》の描写力は見事というほかない。でも今回興味深かったのは、かすかに字が読み取れる「グラッフィーティのある壁画」と、描きかけの顔料がそのまま固まってしまった「顔料入りの小皿」。どちらも完成された壁画より現場感が漂っている。

2016/04/28(木)(村田真)

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生誕150年記念 中村不折の魅力

会期:2016/04/30~2016/07/24

中村屋サロン美術館[東京都]

生誕150年というから黒田清輝と同い年。パリに留学し、ラファエル・コランに師事したというのも黒田と同じ。なのに黒田と大きな差がついたのは、不折の留学が黒田より20年近く遅かったこと、もうそのころには帰国した黒田の尽力により曲がりなりにも近代絵画が根づき始めていたこと、新派と呼ばれた黒田に対して不折は旧派の画家に学んだこと、「書は美術ならず」といわれた時代に書も手がけたこと、要するに時代に乗り遅れたってことだ。でもその屈折した心情が絵に奥行きを与える場合もあるからおもしろい。同展は油絵15点ほどに人体デッサン、水彩、水墨画、本の表紙絵、中村屋の看板まで約50点の中規模な展示。

2016/04/28(木)(村田真)

ルノワール展

会期:2016/04/27~2016/08/22

国立新美術館[東京都]

名古屋では「ルノワールの時代」展をやってるが、あちらはボストン美術館所蔵、こちらはオルセー美術館とオランジュリー美術館所蔵だ。どうせなら合体してほしいところだが、そうはいかない大人の事情があるらしい。まあんまり興味ないんでどっちでもいいけど。そうなのだ。ぼくはどうしてもルノワールを好きになれないのだ。ならなんで見に行ったのかというと、なぜぼくはルノワールが好きじゃないかを知りたかったからだ。で、なにがわかったかというと、結局ルノワールは光とか時間といった抽象的な思考より、ただ人を描くことが好きだったんだということだ。ある意味、画家としては珍しく幸せな人生を送ったんじゃないかな。だから見る者としては物足りない。やっぱり他人の苦労や不幸の結晶を見たいわけですよ観客は。展示構成は、目玉の《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》と、《田舎のダンス》《都会のダンス》の連作を向い合わせに配し、その間のスペースを広くとって予想できる混雑にあらかじめ対応しようとしているのがイヤな感じだった。

2016/04/26(火)(村田真)

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