artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

荒木伸吾回顧展「瞳と魂」

会期:2012/11/14~2012/12/10

アーツ千代田B104[東京都]

ぜんぜん知らなかったけど、荒木伸吾(1939-2011)は「巨人の星」「あしたのジョー」「ベルサイユのばら」「ジャングル大帝」「キューティーハニー」「聖闘士星矢」などの作画やキャラクターデザインを手がけたアニメーター。これだけのアニメを手がけたんだからよっぽど器用な人だったはず。当初、貸本劇画を描いていた荒木が60年代にアニメ界に活路を見出したのは、その器用さを買われてのことだったのかも。もちろん貸本の凋落とアニメの急成長という背景もあったに違いない。しかし他人の漫画をアニメ化するだけではたして満足してたんだろうか。必ずしもそうでなかったことは、70歳を過ぎて45年ぶりに自分の漫画を描き始め、死の当日まで描き続けたことからもうかがえる。作品には興味ないけど、生き方には考えさせられるものがあるなあ。

2012/11/22(木)(村田真)

久村卓──あってないようなもの

会期:2012/11/14~2012/12/24

3331ギャラリー[東京都]

使いまわしの仮設壁や台座などをギャラリーに林立させ、人ひとりがようやく通れる迷路のような隙間をつくっている。仮設壁や台座はオフホワイトなので圧迫感はないが、各パーツが平行または直角に配置されておらず少し斜めに置かれてるため、実際に通り抜けようとすると予想外の動きが必要となる。床に額入り写真が置いてあったり、作品ファイルが立て掛けてあったり、なにか作業途中で放り出したような、なげやりな感じがとてもよい。

2012/11/22(木)(村田真)

3331TRANS ARTS展

会期:2012/10/21~2012/12/02

3331メインギャラリー[東京都]

領域を超えてアートの本質に迫ろうとの趣旨で、Wahプロジェクトやハジメテンやコンタクト・ゴンゾなど13チームが参加している。家族の肖像をフィギュア化するパーティとかおもしろそうなチームもあったが、展覧会としてはつまんなかったなあ。展覧会というよりプレゼンの場というべきか。いずれにせよこのあと見た旧電機大学のカオティックな空気とはかけ離れていた。

2012/11/22(木)(村田真)

会田誠──天才でごめんなさい

会期:2012/11/17~2012/03/31

森美術館[東京都]

会田は自分の立ち位置を正確に把握し、その位置から期待どおりの鬼畜作品を供給し続けることができる希有なアーティストだ。そこが彼の天才たるゆえんだろう。実は「期待どおり」というのはきわめて難しいことで、つねに期待を少し上回っていなければならない。なぜなら本当に「期待どおり」であれば、それはあらかじめ想像可能な範囲に収まってしまい、つまり「予想どおり」にすぎないからだ。したがって「期待どおり」とはつねに期待を裏切っていなければならないのだ。今回の会田の個展は約20年におよぶ画業の回顧展といっていいもので、初期の《あぜ道》から《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》《スペース・ウンコ》《ジューサーミキサー》《滝の絵》《灰色の山》まで、出品作品の大半は見覚えのあるものばかり。その意味では(残念ながら)期待どおりによかった。初めて見る最新作《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》も期待を裏切らない大作だし、「18禁部屋」もしつこいけど期待どおり。観客を裏切ってくれないのだ。ところで展覧会の可否はただの作品総体で決まるわけではなく、作品相互の相乗効果(ときに相殺効果)や開催時期、美術館や観客との相性などによっても左右されるはず。しかしここでも会田展は踏み外すことなく、妙な言い方だが予想以上に期待どおりだった。とくに森美術館とは相性がいいのか悪いのか、あらゆる作品が「作品然」として収まってしまっていた。かつての映画のタイトルをもじれば、この展覧会は会田以上でも以下でもない「=(イコール)会田誠」といえる。観客も会田自身も、それで満足するかしないかだ。

2012/11/19(月)(村田真)

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第2回 日本画先端表現コース展[パッケージ]

会期:2012/11/02~2012/11/25

アートベース石引[石川県]

金沢といえば保守的な街のイメージがあるから、金沢美大の日本画科なんかウルトラコンサバかと思っていたら、最近は先端表現コースもできたんだそうな。これも21世紀美術館効果かもしれない、とのたまうのは同コースで孤軍奮闘する吉田暁子センセ。昨日は吉田センセの招きでレクチャーし、今朝は彼女の教え子たちの作品をケナシたあと、彼らの展覧会を見に来たというわけ。たしかに抽象あり、マンガあり、映像あり、ボックス状インスタレーションありと、伝統的な日本画からすればずいぶん逸脱しているし、興味深い作品もないわけではないけれど、でもひとたび日本画という枠組みを取っ払ったらたんに未熟な現代美術にすぎないのでは? 日本画の枠内で嵐を起こすのか、それとも日本画を超えてアートの先端で暴れるのか?

2012/11/17(土)(村田真)