artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

館勝生 展

会期:2012/10/12~2012/11/04

ヨシミアーツ[大阪府]

通天閣のふもとで昼飯食って、笹部画材で絵具を買ってヨシミアーツへ。3年前、44歳の若さで亡くなった画家の遺作展。館(たち)さんとは20年ほど前に東京や京都で何度かお会いしたが、当時は植物の芽か虫の羽根のような形態を、濃緑色を中心に炸裂するようなタッチで描いていた。その後もたびたび個展の案内状をいただき、気にはしていたものの見ることがかなわず、どのように作品が展開していったのか知らなかった。今回、亡くなる前年(すでに癌が進行していた)の作品を見て、描かれているものは大きく変わっていたけれど、まぎれもなく館さんの絵であることが了解できた。どれも画面の左上のほうに(右利きだったら描きにくいはず)、飛沫が飛び散るくらい鉛筆と絵具でグリグリ塗りたくった絵。これは絵を描くというより、なにか印さざるをえないような衝動に突き動かされて腕を振り回した痕跡というべきだ。これ以上どう展開できただろうか。もはや展開する余裕も余地もないことを知ってて描いたんだろうか。

2012/11/02(金)(村田真)

北斎──風景・美人・奇想

会期:2012/10/30~2012/12/09

大阪市立美術館[大阪府]

今日は阪神日帰りの旅。まずは天王寺の大阪市立美術館へ。なぜ大阪で「北斎展」なのかというと、200年前の文化9(1812)年に北斎が大坂を訪れたという説があるからだ。いわば来坂200周年記念(+主催の読売新聞大阪発刊60周年)。当時『北斎画式』という絵手本が大坂で出版されたり、北洲や北敬といった大坂の絵師たちが弟子入りしたらしい。今回は《富嶽三十六景》をはじめとする風景画、肉筆も含めた美人画、妖怪や漫画などの奇想画を3本柱に、大坂と北斎とのつながりを示すコーナーも設けられている。とはいえ浮世絵版画は見慣れたものばかりだし、サイズも思ったより小さく、また作品保護のため照明も落とされているので早足に通りすぎ、肉筆画のところで足を止める。なかでも同館所蔵の重要文化財《潮干狩図》は、江戸絵画には珍しい遠近感で細密に描かれ、斬新な技法表現も採り入れられていて、驚くほどモダン。思うに北斎という画人は、関西人には悪いが、応挙の写生力と若冲の奇想と蕭白の衒気性を足しても足りないくらい巨大な存在だ。いきなりこんなヘヴィーなもんを見せられると先が思いやられる。ちなみに出品点数243点、展示替えを含めた作品総数は378点にものぼる。1時間ほどで退散。

2012/11/02(金)(村田真)

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ジャン・ミシェル・ブリュイエール/LFKs「たった一人の中庭」

会期:2012/10/27~2012/11/04

にしすがも創造舎[東京都]

フェスティバル/トーキョーのプログラムのひとつだが、演劇公演とは違ってインスタレーションの展示。したがって観客は開場時間内ならいつでも見られるという利点がある。会場は学校の跡地なので教室が舞台になる。最初の教室ではヒラヒラをつけたモップのオバケみたいなのが5、6人踊っている。部屋もオバケも真っ白だ。次の教室は家庭科室だろうか、スモークがたかれ、鍋で卵をゆでている。なんだこれは? その次の教室は理科室だろう、各テーブル横のシンクに首のない小さな人形が座り、リズミカルに電話が鳴り、水道水が流れる。……といった感じ。最後は体育館で、テント内で白衣の人たちが作業中で、ポップ音楽が鳴るとみんなで踊り出す。テントの外はマユみたいなクッションが床全体に敷きつめられ、手術用ベッドが上下に動いてる。なんかワケわかんないけどおもしろかった。

2012/10/30(火)(村田真)

都筑アートプロジェクト2012

会期:2012/10/07~2012/10/28

横浜市営地下鉄センター北駅+グリーンライン高架下ほか[神奈川県]

これまでセンター北駅から徒歩10分ほどの大塚・歳勝土遺跡公園を舞台にしてきたが、今回は駅に直結する場所が確保できたので移転。しかし結果はちょっとなあ。たしかに駅に近いのは便利だし、より多くの人に見てもらえるのはいいのだが、メイン会場の高架下はフェンスに囲まれた殺風景な空間。遺跡公園の竪穴式住居や江戸時代の民家のような歴史もなければ、丘も林も池もないたんなる更地なので、作品づくりのとっかかりがないのだ。だから作品たちは檻のなかの動物のように所在なげで寂しそうだった。でもいいこともあった。ある若者が勝手にフェンスに自分の作品を展示したのだ。なぜかカッパの絵と彫刻と解説図のセットで、作品的にはちょっとアレだけど、自分も出してみようと思わせるなにかを感じたに違いない。あるいはこの程度の作品だったら自分もできると踏んだのかもしれないが、いずれにせよ市民を刺激し、誘発したのは事実。こういうことが許されるのもゆるいアートプロジェクトならではのこと、美術館では許されないからね。

2012/10/28(日)(村田真)

川俣正・東京インプログレス ドームづくり

会期:2012/09/15~2012/10/26

春海橋公園[東京都]

川俣が汐入タワー(荒川区)、佃テラス(中央区)に続いて制作した春海橋公園の豊洲ドーム(江東区)。タワー、テラス、ドームと手持ちの技を繰り出している。高さ12メートルのこのドームは、がっちり組み立てた鉄骨構造の内外に都内で集めた廃材を斜めに貼りつけていったもの。コップを伏せたような形態で、なんとなく原発を思い出させないでもない。

2012/10/27(土)(村田真)