artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

束芋「ててて」

会期:2010/08/05~2010/09/11

ギャラリー小柳[東京都]

いまもっとも勢いのあるアーティストの個展。朝日新聞の連載小説のために描いた挿絵をまとめたアーティストブック『惡人』の出版記念、および来年のヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表決定記念でもある。手のドローイングに本物の毛髪を組み合わせた《ててて》をはじめ、シンガポールで制作した手漉き和紙を使ったシリーズ、映像インスタレーション《ギニョラマ》、それにオブジェ本ともいうべき『惡人』特装版と盛りだくさんの出品。盛りだくさんすぎて焦点がボケてしまいそうだが、毛髪を使ったドローイングは不気味でいいなあ。

2010/08/06(金)(村田真)

山本太郎 古典─the classics─ Tales

会期:2010/07/02~2010/08/12

第一生命南ギャラリー[東京都]

日本画に現代的モチーフを忍ばせた「ニッポン画」を標榜する山本の個展。今回は「卒都婆小町」「桜川」「隅田川」といった古典文学に基づく主題に、点字ブロックや青いビニールシートみたいなポップでチープなアイテムを組み合わせている。《形態不時屏風》は富士山の前に工場の煙突が立つ風景もさることながら、横長の屏風そのものが折りたたみ式携帯を模した作品。これはおもしろい。しかし今回の白眉ともいうべき幅16メートル近い超横長大作《白線散華図》は、壁面を埋めるにはいいかもしれないが、作品としてはあまり感心しなかった。

2010/08/06(金)(村田真)

新世代への視点2010

会期:2010/07/26~2010/08/07

なびす画廊+藍画廊+ギャラリー58+ギャルリーSOL+ギャラリーなつか+コバヤシ画廊+ギャラリー現+ギャラリーQ+ギャラリイK+ギャルリー東京ユマニテ+gallery 21 yo-j[東京都]

毎年夏恒例の同時多発企画展。昨年の参加画廊は12軒だったが、今年は11軒。差し引き1軒が永遠に抜けてしまった事実は重い。今年の出品作家11人のうち7人が女性。黒く塗り込めた背景から人物や建物を輝くように浮かび上がらせる田中千智の絵(ギャラリー現)、新聞紙の広告ページなどを巧みに使ってポップな群像をつくりあげる富田菜摘の彫刻(ギャルリー東京ユマニテ)、障子を屏風状に仕立て「蟹鮨」の店やテニスコートばかりを描く羽毛田信一郎の水墨(ギャラリイK)が印象に残った。なにかこだわりとか偏りの強さが作品の強度を保証しているように思える。もちろんそれを説得力のある表現に高めるだけの手技が必要なことはいうまでもないけど。

2010/08/06(金)(村田真)

ガーリー2010展

会期:2010/07/27~2010/08/10

川崎市市民ミュージアム[神奈川県]

少女というよりギャルを描いた絵、人形、写真、映像など、おたく好みの作品が並ぶ。竹久夢二の落書き、草間彌生のオブジェ、戸川純のライブ映像(いま見てもやっぱり変)といったオマケつき。川崎市も目配りが早いと思ったら、やってるのは銀座芸術研究所だった。せっかくの企画、なんでアクセスの悪い市民ミュージアムでやるのかね。

2010/08/05(木)(村田真)

~展

会期:2010/07/30~2010/08/05

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

多摩美芸術学科が企画し、絵画学科や情報デザイン学科の学生が出品する展覧会。担当教官の海老塚耕一と上田雄三は男だが、キュレーター(3人)もアーティスト(25人)も大半が女の子。さらに韓国からの留学生が5人も入ってる。タイトルの~は「なみ」と読み、現代人のコミュニケーションの揺らぎや人々の心の波を表わすらしい。ま、個々の作品もキュレーションの切れ味も「並」だな。

2010/07/31(土)(村田真)