artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

没後25年 鴨居玲 終わらない旅

会期:2010/07/17~2010/08/31

そごう美術館[神奈川県]

1969年に安井賞を受賞、85年に57歳で世を去った具象画家の回顧展。醜くデフォルメされた人物像、暗い色調、露悪趣味などいかにも一世代前の日本の具象画といった印象だ。いまの若い人たちの軽快な絵と比べると、いったい鴨居はなにを悩んでいたのかと不思議な気がしてくる。あらためて時代の残酷さを感じてしまった。

2010/07/22(木)(村田真)

TWSエマージング2010

会期:2010/07/03~2010/07/25

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

公募展「トーキョーワンダーウォール」の入選者のなかから、さらに選ばれたアーティストを3人ずつ個展形式で紹介するエマージング展。今回は大小島真木、中田有美、佐藤翠で3人とも女性、のみならず、その前後の展覧会も名前から察するに全員女性ではないか。レベルも高い。大小島の物語の構築力にも舌を巻くが、なんといっても佐藤の絵画世界に脱帽せざるをえない。キャンヴァスにクローゼットの内部を描いたり、棚や鏡にペイントしたりしているのだが、その淡い色彩といい薄塗りの筆づかいといい達者なこと。いやあ得した気分。TWS、もっと注目されていい。

2010/07/21(水)(村田真)

Oコレクションによる空想美術館 アートバトルロワイアル

会期:2010/07/03~2010/07/25

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

0000(オーフォー)、カオス*ラウンジ、now、20TN!(にじゅってん!)という表記するのも腹立たしいグループによるバトルショー。なかでもスーパーフラットなはずのネット上のマンガを量塊感あふれる物(ブツ)として見せたカオス*ラウンジと、8畳くらいの広さに「今」という字をコンクリートで固めて壊していくnowは、おじさんにもわかりやすかったナウ。

2010/07/21(水)(村田真)

須田悦弘

会期:2010/06/25~2010/07/31

GALLERY KOYANAGI[東京都]

壁面は余白のまま残し、柱の隅など目立たない場所に植物の木彫を10体ほどインスタレーションしている。モチーフは夏らしくアサガオが中心。もちろん一年中枯れないおトクなアサガオだ。須田といえば植物の木彫が定着したが、これからも植物を彫り続けるんだろうか、それともある日突然、違うものを彫り始めるんだろうか。いずれにせよ須田の作品は超絶技巧の木彫+絶妙なインスタレーションの2段構えだから強い。

2010/07/21(水)(村田真)

瀬戸内国際芸術祭2010

会期:2010/07/19~2010/10/31

犬島+豊島[岡山県、香川県]

2日目はプレスツアーで犬島へ。7島のうち唯一岡山県下の犬島では、この芸術祭に先行してすでに柳幸典によるアートプロジェクト「精錬所」が公開されているので、まずはそちらを鑑賞。これはすごい。光を求めて迷路状のトンネルをさまよい歩く趣向だが、さすがカネのかかったプロジェクトは見ごたえがある。そのあと、柳の作品と妹島和世の建築によるコラボレーション「家プロジェクト」4点を見る。4点ともそれほど離れてないので、1時間もあれば見て歩ける。こちらは逆にカネをかけるほどのもんかという気もするが、空家が無駄に朽ちていくよりはるかに建設的な試みではある。
産業廃棄物不法投棄という不名誉な話題で知られる豊島へ渡る。人里離れた海岸のはずれに建つ医院のような建物が、クリスチャン・ボルタンスキーの《心臓音のアーカイブ》。メインルームに入ると世界中から採集した心臓の鼓動が響き、それに合わせて光が明滅する。越後妻有の廃校でのインスタレーションも含めて、どうもボルタンスキーの作品はコケおどしにしか感じられてならない。また、港近くのオラファー・エリアソンの虹をつくるインスタレーションもそうだが、なぜ豊島に《心臓音のアーカイブ》をつくったのか理由がわからない。それに比べれば、神社の貯水槽の上に水紋を思わせる鉄の彫刻を置いた青木野枝や、空家に滞在し「藤島八十郎」として絵本を書く藤浩志らのほうが、よほど場所に即した作品づくりをしていて好感がもてた。論議を呼びそうなのが、同じ地区の空家を利用したジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーの《ストーム・ハウス》。これはもはや既視感というレベルではなく、昨年「大地の芸術祭」で発表され、あまりのバカバカしさに感動した同じ作者のインスタレーション《ストーム・ルーム》を、そのまま瀬戸内に移設しただけのもの。地元の人たちには初めてかもしれないけど、観客のおそらく何割かは越後妻有も体験しているはずなので、幻滅する人も多いのではないか。世界中でこうした国際芸術祭が増えれば、当然アーティストもダブってくるし、同じコンセプトの作品が各地に増殖していく事態は避けられないだろう。しかしテーマパークのアトラクションと違い、アートは地域特有の文化資源を掘り起こす役割を担っているのではなかったか。まあ彼らの作品は芸術祭のなかでも「アトラクション」に近いが。

2010/07/18(日)(村田真)