artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

オノデラユキ 写真の迷宮へ

会期:2010/07/27~2010/09/26

東京都写真美術館[東京都]

90年代の「古着のポートレート」から最新作まで、9シリーズ60点の展示。うち6シリーズはこれまでに見てきたが、初見のシリーズも含めて彼女の作品はいずれも、写真というものの常識的な思考・技術をウィットに富んだ方法でずらし、その異相から写真を問い直す試みといえる。なかでもぼくの好きなのは、群集の頭上に光の玉が写ってる「真珠のつくり方」というシリーズ。種明かしすれば、カメラの内部にビー玉を仕込んで撮ったものだが、ミクロな異物の光があたかも核爆発のように群集の頭上に降り注ぐ不穏な写真だ。ただこの展覧会では、十分に広いとはいえない1フロアに9シリーズを各数点ずつ押し込んでいるため、さまざまな試みを行なっていることは伝わるけれど、それぞれのシリーズについてどこまで深い理解が得られるか。

2010/07/29(木)(村田真)

淺井裕介「植物と宴」

会期:2010/07/23~2010/09/04

アラタニウラノ[東京都]

近ごろ急速に引っぱりダコ化してる淺井の個展。彼の絵の本領は、マスキングテープを壁に貼った上にドローイングしていく「マスキングプラント」と、壁に現地調達した泥などで絵を描いていく「泥絵」の2種だが、どちらも壁画で、おまけにいずれ消滅するから売りものにならない。画商泣かせの画家だ。もちろん絵具を使って単体の絵も描くが、ほっとくとすぐ壁にはみ出していく。それが彼の本領だから、だれも止めてはならない。

2010/07/23(金)(村田真)

MAMプロジェクト012 トロマラマ

会期:2010/07/24~2010/11/07

森美術館ギャラリー1[東京都]

インドネシア発の世にも珍しい版画アニメ。そのために用いた400枚以上の版木や、ボタンとビーズによるコマ撮りアニメも公開。アニメの世界的拡がりには注目すべきものがある。

2010/07/23(金)(村田真)

ネイチャー・センス展

会期:2010/07/24~2010/11/07

森美術館[東京都]

吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆の3人展。どでかい美術館を3人で埋めるのだから、みんな最大級の仕事をしている。大量の白い羽毛を風で吹き上げる吉岡も、3面スクリーンの映像と血の池を出品した篠田も力作だが、もっとも納得したのは栗林の作品。森から型取りした広大な紙に穴を開け、土中から首を出してながめる趣向のインスタレーションや、島の海中部分を彫刻した作品など、見たいけど見えないものを可視化してくれた。

2010/07/23(金)(村田真)

まつながえみ展

会期:2010/07/12~2010/07/24

ギャルリーパリ[神奈川県]

ぬいぐるみのような動物や花などのシルエットをパステルカラーで描いた絵。作品より作者本人のほうがキャラ立ちしているのが惜しい。

2010/07/23(金)(村田真)