artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
バーネット・ニューマン
会期:2010/09/04~2010/12/12
川村記念美術館[東京都]
待望された「ニューマン展」、といえるだろうか。目の端をくすぐるようなささやかなポップがもてはやされ、画面との一対一の対話を強いられる重厚長大な抽象が敬遠されて絶滅寸前のこの時代に、なにをいまさらという気がしないでもない……が、むしろそんな時代だからこそ「待望のニューマン」でなければならないはずだ。いや実際、向こうから拒絶してくるようなニューマンの無愛想な画面を相手に対話を試みるのはツライ。でもそのツラさを通り越すといろいろ見えてくるものがあるのも事実。たとえば、赤一色に塗られていると思ったら微妙なニュアンスがついていたとか、画面を縦断する垂直線(ジップ)にもあるリズムというか規則性があるとか。そんなどうでもいいようなことに気づき始めると、今度は「なぜ絵画は平らなのか」「なぜ画面は四角いのか」「なぜ額縁がないのか」「どこまで行けば絵画でなくなるのか」「つまるところ絵画とはなにか」といった、どうでもよくない根源的な疑問が次々に降りかかってくることになる。もちろん正解があるわけではなく、自分たちでそれぞれ納得のいく答えを見つけなくてはならないのだが、じつはそれこそが「ニューマン展」の効用なのではないか。絵画とじっくり向き合い、なんでもいいから言葉を紡ぎ出してみること。これは最近、疎んじられていることである。
2010/09/03(金)(村田真)
第95回記念二科展
会期:2010/09/01~2010/09/13
国立新美術館[東京都]
初日の開館まもない時間に行ってみる。二科展は1階から3階までのレンタルスペースを独占するが、会員は1階の入口近く、会友は1、2階を占め、残りの入選者は余った場所に2段掛けでつめこまれている。入ってすぐ、1枚の絵の前に椅子が置かれ、おじいちゃんが座ってる。最長老で理事長の織田廣喜だ。なんと二科会が結成された年と同じ1914年生まれの96歳。70年前に二科展に初入選し、60年前に会員に推挙されたという「生きる歴史」。関係者があいさつし、写真を撮っていく。まるでパンダ。会場をざっとひとめぐりしてみるが、迷路のように迷ってしまう。会場構成に難があるというより、どれもこれも似たような作品ばかりなので方向感覚が狂うのだ。日の丸を描いてるやつがいたが、なんと総理大臣賞を受賞している。工藤静香は特選だ。どうやら絵の良し悪しと賞とはなんの関係もないらしい。たとえば吉井愛のように「現代アート」と呼んでもいいような作品も何点かあったが、絵画だけで約千点もの入選作品の99パーセント以上は迷路を構成する壁でしかなかった。
2010/09/01(水)(村田真)
丸山純子「けるけないの森へ」
会期:2010/08/21~2010/08/29
ムーンハウス[神奈川県]
横浜のスタジオ+レジデンスのスペース、ムーンハウスで早2度目の展示。作品は相変わらず水と油で石鹸をつくったり、プラスチックを熱で変形させているのだが、なにか研究発表の場みたいな雰囲気。もっとも今日は田中信太郎さんをゲストに迎えての対談があり、作品は隅のほうへ押しやられていたが。その信太郎さんも「作品をごちゃごちゃ置かず、ひとつに絞れ」と痛烈に指摘していた。ごもっとも。
2010/08/29(日)(村田真)
アニメ作家──辻真先の世界展
会期:2010/08/10~2010/08/31
江東区森下文化センター[東京都]
この日は森下文化センターで須田悦弘と対談があり、終わってから須田氏と階下のギャラリーで見る。辻真先は「鉄腕アトム」「エイトマン」「スーパージェッター」「宇宙少年ソラン」「オバケのQ太郎」「ゲゲゲの鬼太郎」などのアニメ脚本を書いた人。自慢じゃないが、いまあげたアニメはみんな主題歌を(サワリだけだけど)歌えるぞ。展示はともかく、江東区にはこうした文化センターがいくつもあって、それぞれ特徴ある活動をしているという。森下は田河水泡ゆかりの地ということで「のらくろ」の資料を集めたコーナーがあり、また東京都現代美術館や清澄白河のギャラリービルも近いせいか、現代美術や工芸関連の催しが盛んだ。単なる下町だと思っていたが、高等区になってきた。
2010/08/28(土)(村田真)
10 DAYS SELECTION 赤坂有芽 展
会期:2010/08/19~2010/08/28
INAXギャラリー2[東京都]
壁に青白い映像をホワッと浮かび上がらせる赤坂だが、今回はギャラリーの中央に蚊帳を吊り、そのなかに金魚の映像を映し出している。これはおもしろい。もっとおもしろくなる可能性がある。
2010/08/23(月)(村田真)