2019年07月15日号
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artscapeレビュー

瀬戸内国際芸術祭2010

2010年08月15日号

会期:2010/07/19~2010/10/31

犬島+豊島[岡山県、香川県]

2日目はプレスツアーで犬島へ。7島のうち唯一岡山県下の犬島では、この芸術祭に先行してすでに柳幸典によるアートプロジェクト「精錬所」が公開されているので、まずはそちらを鑑賞。これはすごい。光を求めて迷路状のトンネルをさまよい歩く趣向だが、さすがカネのかかったプロジェクトは見ごたえがある。そのあと、柳の作品と妹島和世の建築によるコラボレーション「家プロジェクト」4点を見る。4点ともそれほど離れてないので、1時間もあれば見て歩ける。こちらは逆にカネをかけるほどのもんかという気もするが、空家が無駄に朽ちていくよりはるかに建設的な試みではある。
産業廃棄物不法投棄という不名誉な話題で知られる豊島へ渡る。人里離れた海岸のはずれに建つ医院のような建物が、クリスチャン・ボルタンスキーの《心臓音のアーカイブ》。メインルームに入ると世界中から採集した心臓の鼓動が響き、それに合わせて光が明滅する。越後妻有の廃校でのインスタレーションも含めて、どうもボルタンスキーの作品はコケおどしにしか感じられてならない。また、港近くのオラファー・エリアソンの虹をつくるインスタレーションもそうだが、なぜ豊島に《心臓音のアーカイブ》をつくったのか理由がわからない。それに比べれば、神社の貯水槽の上に水紋を思わせる鉄の彫刻を置いた青木野枝や、空家に滞在し「藤島八十郎」として絵本を書く藤浩志らのほうが、よほど場所に即した作品づくりをしていて好感がもてた。論議を呼びそうなのが、同じ地区の空家を利用したジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラーの《ストーム・ハウス》。これはもはや既視感というレベルではなく、昨年「大地の芸術祭」で発表され、あまりのバカバカしさに感動した同じ作者のインスタレーション《ストーム・ルーム》を、そのまま瀬戸内に移設しただけのもの。地元の人たちには初めてかもしれないけど、観客のおそらく何割かは越後妻有も体験しているはずなので、幻滅する人も多いのではないか。世界中でこうした国際芸術祭が増えれば、当然アーティストもダブってくるし、同じコンセプトの作品が各地に増殖していく事態は避けられないだろう。しかしテーマパークのアトラクションと違い、アートは地域特有の文化資源を掘り起こす役割を担っているのではなかったか。まあ彼らの作品は芸術祭のなかでも「アトラクション」に近いが。

2010/07/18(日)(村田真)

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