artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

六本木クロッシング2010──芸術は可能か?

会期:2010/03/20~2010/07/04

森美術館[東京都]

会場に入るといきなり日の丸が目に飛び込んでくる。これも照屋勇賢の作品(さかさまに展示されているがだれも気づかない)。初物では、手描きでCDジャケットを描いた相川勝が群を抜く。歌詞やライナーノーツまで手書きだが、驚くのはCD本体にも本人のアカペラが録音されていること。新聞を克明に模写した前回の吉村芳生にも近いが、吉村がどこか求道的であるのに対して、相川はよりポップで、楽しげにつくってるのが伝わってくる。世代の違いか。

2010/03/19(金)(村田真)

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照屋勇賢──ひいおばあさんはUSA

会期:2010/03/14~2010/03/30

上野の森美術館[東京都]

カメや飛行機の型を切り抜いたティッシュの箱やお菓子の箱が机に置かれ、その型で染めた長い布が机とクロスするように頭上を横断している。壁には紅型による5点のポートレートが並ぶ。安室奈美恵、具志堅用高、昭和天皇……。沖縄の英雄たちと、沖縄では英雄でない人だ。沖縄はアートのモチーフと制作のモチベーションには事欠かない。

2010/03/19(金)(村田真)

VOCA展2010

会期:2010/03/14~2010/03/30

上野の森美術館[東京都]

VOCA賞の三宅砂織は、何枚かの透明シートに絵を描き、印画紙の上に重ねて露光するという手の込んだ制作方法を採るため、物理的にはプリントだが、イメージは絵ということになる。その折り重なったイメージが心地よいノイズを奏でるが、いかんせん色がない。そのほか注目したのは、日本の歪んだ都市文化をそれぞれ手だれの手法で表わす風間サチコと齋藤芽生、コテコテの油絵で不透明なダブルイメージを構築した平下英理、廃品の金属パイプや蛍光灯、写真などを壁から突出させずにインスタレーションした利部志穂ら。なんだ全員女性じゃないか。あ、ひとりいた。パール色に輝く絵具を用いて、ほんのわずかな色調の差で桜を描いた大庭大介。光線の加減で、画面の上下で地と図が反転して見えるのだ。こんなカメラマン泣かせの画家もいないだろう(カタログの図版は苦労したに違いない)。

2010/03/19(金)(村田真)

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フランク・ブラングィン展

会期:2010/02/23~2010/05/30

国立西洋美術館[東京都]

国立西洋美術館の礎を築いた松方幸次郎が、ヨーロッパで作品を収集する際に助力した画家がブラングィンだ。ブラングィンといっても美術史には出てこない埋もれた画家のひとりだが、絵は抜群にうまいうえ、ポスターや家具デザインまで幅広く手がけていた。むしろその器用さが、モダニズム一辺倒の美術史から排除される要因だったかもしれない。このレベルの画家なら珍しくないからね。このブラングィンといい、黒田清輝を手ほどきしたラファエル・コランといい、日本の西洋美術受容の立役者はあちらの2流画家の独壇場だ。

2010/03/19(金)(村田真)

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ワンダーシード2010

会期:2010/03/06~2010/03/20

トーキョーワンダーサイト・渋谷[東京都]

若いアーティスト対象の公募・販売展。会期前半なのに8割方売れてる。2~3年前ほどではないけれど、いちど勢いがつくと景気が悪化してもなかなか落ちないものだ。質的にも初期の「0号展」のころよりレベルが高い。ちょっと惹かれる作品もあったが、ぐっと抑えた。

2010/03/12(金)(村田真)

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