artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

絵画の庭──ゼロ年代日本の地平から

会期:2010/01/16~2010/04/04

国立国際美術館[大阪府]

これはぜひ見たかったので、終了まぎわに駆け込む。数年前の欧米の絵画を集めた「エッセンシャル・ペインティング」といい、今回の「絵画の庭」といい、なぜか東京の美術館が避けたがる絵画展に正面切って挑戦する姿勢は、このさいホメ倒しておきたい。出品は、現代日本特有の具象画に取り組む28人による約200点。地下2、3階の展示室全体を使って、それぞれが街の画廊程度の広さに区切られたブースで個展形式で作品を見せているので、見ごたえがある。未知の作家も何人かいたが、やはり絵画的構造をしっかり把握している厚地朋子や池田光弘、構造より絵画の快楽を前面に押し出す長谷川繁らにあらためてすばらしさを感じた。一方「例外」とはいえ、明らかに世代的にも作品的にも違和感のある草間彌生がなぜ入っているのか、逆に、展覧会の中心(または起点)に据えてもいい村上隆の出品がなぜ叶わなかったのか、言い出せばキリがないが、そんな不満を帳消しにしておつりが来るほど充実した展示だったといっておこう。ああ大阪へ行ってよかった。

2010/04/03(土)(村田真)

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クリストとジャンヌ・クロード展

会期:2010/02/13~2010/04/06

21_21デザインサイト[東京都]

昨年11月に亡くなったジャンヌ・クロードの追悼展、とは謳ってないけど、クリスト夫妻と仲のよかった三宅一生さんの尽力で成り立った展覧会であることは間違いない。一生さんとクリストとの接点はもちろん「布」。展示は、ブルガリア時代のクリストのドローイングから、パリでのジャンヌ・クロードとの出会いを経て、初期の梱包作品、《ヴァレー・カーテン》《包まれたポン・ヌフ》《アンブレラ》などの巨大プロジェクト、そして《オーバー・ザ・リバー》などの未実現のプロジェクトまでを紹介している。展覧会ディレクターを務めたのは、昨年末に『クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』を上梓した柳正彦。展示は本の立体版といった趣で、展覧会を見逃した人はこの本でじっくり味わってほしい。もちろん、本物の作品の持つ非現実的な美しさは本でも展覧会でも伝わらないけどね。

2010/04/02(金)(村田真)

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森下泰輔「藝術資本論」

会期:2010/03/27~2010/04/10

サテライツ・アートラボ[東京都]

神保町の裏通りにできた銀座芸術研究所のサテライト。森下は、レンブラントの《水浴の女》をはじめ、クールベ《世界の起源》、マネ《草上の昼食》、ピカソ《赤い椅子にすわる裸婦》など名作の模写の横に、バーコードを描いた同サイズのタブローを併置した。模写した名作は、どれも女性を性的欲望の対象として描いたものばかり。そうした描く側(男)と描かれる側(女)の関係は、「他者の欲望」を「象徴交換」する「資本主義」の本質に近いと森下はいうのだが、そんな理屈より、まずはその模写の技術に目を奪われてしまう。笑えるのは、スターツヴァントの《L.H.O.O.Q.》の模写。スターツヴァントはシミュレーショニズムのアーティストで、《L.H.O.O.Q.》といえばデュシャンが《モナ・リザ》にヒゲを描き加えたパロディ作品。つまりこれ、レオナルドを引用したデュシャンをパクったスターツヴァントを模写した森下のオリジナル作品なのだ。

2010/04/01(木)(村田真)

井崎聖子展 共振-resonance-

会期:2010/03/29~2010/04/03

藍画廊[東京都]

一見サラッと円を描いているように見せかけて、じつはなんども重ね塗りをして構築した画面だそうだ。そうは見えないところが奥ゆかしいというか、徒労というか。

2010/04/01(木)(村田真)

田中千智「輝く夜に」

会期:2010/03/29~2010/04/03

ギャラリー現[東京都]

黒い背景に人物。建物を描いた絵もある。なかなか達者な筆づかい。黄金町では肖像画家として名をあげたから、こんどは遺影画家をやったらどうだろう。葬式のときに飾るやつ。写真じゃものたりないって人、けっこういると思う。これはもうかるぞ。

2010/04/01(木)(村田真)