artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

東北大学萩友会同窓生インタビュー 円城塔氏

東北大学東京分室[東京都]

円城塔の小説をまとめて読む機会を得たが、風景の描写や人間のドラマを書くのではなく、本の本、あるいは書くこととは何かを考える概念そのものが対象のメタフィクションが多く、SF的なボルヘスのようだ。東北大の同窓誌のインタビューでは、表現者というより、法螺話の論理を徹底的にドライブさせる職人の側面がうかがえた。彼の本を読んでいると、本人が理想としている文章の生産は、オートマトンで自動書記機械のような感じだ。デビュー作となった『Self-Reference ENGINE』は、研究職の合間に、毎日カフェで限られた時間にお題を決めて書いた短編を連鎖させたものだというのもうなずける。

2016/12/07(水)(五十嵐太郎)

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

ティム・バートンの映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』を見る。「X-MEN」シリーズのように、外界と隔絶して生活する特殊能力をもった子どもたちが、第二次世界大戦の空爆で破壊される前の館で永遠の1日をループする。この館がピクチャレスクなデザインの建築で(ベルギーに実在する城らしい)、廃墟やトピアリのある庭園の表現なども含めて、いかにもティム・バートン好みの舞台だった。

2016/12/07(水)(五十嵐太郎)

「暮らしを寿ぐ切り紙 窓花」展

会期:2016/12/02~2017/01/22

ATELIER MUJI[東京都]

「暮らしを寿ぐ切り紙 窓花」展@無印良品・有楽町アトリエムジへ。中国の中央部に暮らす人々が、新年を迎えるお祝いにつくる切り紙で、家屋の窓を飾る「窓花」を紹介する。とても素朴だが、生活の延長から生み出されるテンポラリーな建築の装飾として興味深い。

2016/12/05(月)(五十嵐太郎)

フェスティバル/トーキョー16 チェルフィッチュ「あなたが彼女にしてあげられることは何もない」

会期:2016/12/02~2016/12/05

南池袋公園内 Racines FARM to PARK[東京都]

ある意味では通常の観客と俳優の位置が逆転していた。すなわち、屋外サイドから、カフェの店内に座る女優をガラス越しに見る演劇である(声や音はヘッドホンを通じて聴く)。何気ない都市の日常風景のなか、卓上のコップやコーヒーを使いながら(ゆえに、前上から撮影した映像も屋外のモニターに流す)、独特の天地/世界創造を突然語り出すSF(?)のような、もしくは独り言の妄想のような、怒涛の30分! だった。それにしても、派手なことをせずとも、普通のモノを手にしながら、わずかな語りで、あっという間に引き込んでしまう岡田利規の演出はさすがである。

2016/12/04(日)(五十嵐太郎)

三代目、りちゃあど

会期:2016/11/26~2016/12/04

東京芸術劇場 シアターウエスト[東京都]

野田秀樹作、オン・ケンセン演出「三代目、りちゃあど」@芸術劇場。出演者や関係者の国籍、手法、題材としては、ガムランと影絵、歌舞伎、狂言、宝塚の要素、英語、日本語、インドネシア語、ジェンダーが混淆し、まさにポストモダンの多様性を具現化する。またシェイクスピアの原作を家元争いになぞらえ、メタフィクション的に書き換えながら、スパークさせた。あまりの情報量の多さゆえに、頭をフル回転してみるべき作品である。

2016/12/04(日)(五十嵐太郎)