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五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

岡山芸術交流 Okayama Art Summit 2016

会期:2016/10/09~2016/11/27

林原美術館ほか[岡山県]

岡山芸術交流へ。リアム・ギリックがディレクターということもあるのだろうが、必ずしも新作でないにせよ、海外の作家が多く、日本人が少ない。いわゆる日本の若手枠や地元枠もなさそうだ。なので、西欧の国際展を鑑賞しているような感じである。「地域アート」に迎合せずということか。会場は岡山市の文化ゾーンの建築群に集中しているおかげで、分散型のさいたまトリエンナーレに比べて、とてもまわりやすく助かる。なお、建築の観点からは、該当エリアで前川國男のクラシックなモダン、岡田新一の重厚な建築(オリエント美術館や岡山県立美術館など)、芦原義信のホールほか、いくつかの近代公共施設群に立ち寄ることができる。屋外展示では、神戸大の槻橋研、京都大の平田研、東大の千葉研が手がけた屋台的なパビリオンのほか、ジャン・プルーヴェの建築なども楽しめる。

写真:左=上から、サイモン・フジワラ、神戸大の槻橋研、オリエント美術館 右=上から、前川國男、ジャン・プルーヴェ、芦原義信

2016/11/17(木)(五十嵐太郎)

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シアターコクーン・オンレパートリー2016 メトロポリス

会期:2016/11/07~2016/11/30

Bunkamuraシアターコクーン[東京都]

松たか子、森山未來らが出演する「メトロポリス」。SF映画や原作の骨格を維持しながらも、音楽、山田うんによる振り付け、都市を表現するメタリックな舞台美術、劇的な照明、メタフィクション的な幕間など、過剰なくらいに盛られた串田和美の演出だった。その理由は、本人が映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に触発されたという発言を読んで納得した。

2016/11/14(月)(五十嵐太郎)

NISSAY OPERA 2016 オペラ「後宮からの逃走」

会期:2016/11/11~2016/11/13

日生劇場[東京都]

外部と内部を隔てる門、そして状況に応じて机や椅子が回転・移動し、さまざまに編成を変えたり、コンスタンツェが後姿で立ち尽くすシーンなど、田尾下哲らしい演出を楽しめる。物語は喜劇タッチだが、モーツァルトが原作を変えたラストは、イスラム教徒のセリムが復讐ではなく、赦しを選ぶびっくりするような締めだった。ここは現代社会にも訴えるメッセージ性を読みとることができる。全体的に歌は少し難ありだったが。

2016/11/13(日)(五十嵐太郎)

トーマス・ルフ展

会期:2016/08/30~2016/11/13

東京国立近代美術館[東京都]

これまでいろいろ断片的にルフの作品を見てきたが、これだけまとまった展示は初めてである。建築系では、ミースや大阪万博を題材にしたものが興味深い。初期から近年の作品に至るまで、写真や知覚の最前線に切り込んできた現代性が浮かび上がる。なお、いつもと違い、作品の写真撮り放題ということで、あちこちで鑑賞者がパチパチ撮っている会場の様子がまた、写真とは何かを考えさせる契機になっている。

2016/11/13(日)(五十嵐太郎)

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小高の鈴木邸/南相馬ワークショップ事前調査・ヒアリング

会期:2016/11/12

[福島県]

南相馬へ日帰り。3.11後、しばらくは道路が封鎖されていたために、いつも仙台から南下して訪れていたが、今回は郡山から6号線を経由し、北上して向かう。途中は自動車による通過はできるけど、止まって、立ち入りすることは禁止のエリアが続く。それゆえ、道路に面した家屋や建物の門にことごとくバリケードが設置されている。立ち止まることが許されない、刺々しい無人の風景がいまも残っている。
南相馬の仮設住宅から帰還する自治会長、小高の鈴木邸は、はりゅうウッドスタジオが設計に関与し、使わなくなった2階の床を外して減築することによって、天井が高い、集会所的に使える空間を生み出した。ここでせんだいメディアテークの清水建人と北野央によるレクチャーを開催し、震災と記憶、アート、そして志賀理江子の展覧会をめぐる議論を行なった。また仮設住宅地の経験や今後の居住についてのヒアリング調査も行なう。東北大五十嵐研で手がけた塔と壁画のある集会所についてのアンケートの予備調査を通じて判明したのは、新しい生活を始める人たちがこれを移設したいとか、部分だけでも欲しいといった反応があるらしく、思っていた以上に仮設住宅地において合理性や機能性からは生まれない意味を獲得していたことだった。

写真:小高の鈴木邸

2016/11/12(土)(五十嵐太郎)