artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 関連企画「future practice」

会期:2016/05/28~2016/11/27

PALAZZO ROSSINI[イタリア、ヴェネチア]

月曜はビエンナーレが休みにつき、ヴェネツィアの現代建築めぐりをしようと思ったら、船がストライキだった。仕方なく徒歩圏でまわれるエリアを散策する。ビエンナーレ関連企画のパラッツオ・ロッシーニでは、「フューチャー・プラクティス」と題して、国際ワークショップなど、ハンブルグの建築教育を紹介していた。

2016/09/12(月)(五十嵐太郎)

第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 ドイツ館ほか

会期:2016/05/28~2016/11/27

[イタリア、ヴェネチア]

日本館のピロティは縁側空間となっていたが、ほとんど人は滞留せず、対照的に、隣りのWi-Fiフリー、充電OKのドイツ館は人がたまっていた。ここは国が難民を受け入れるように、建物を24時間開放する場所に変えた。ジャルディーニのパヴィリオンのなかで最もいかついドイツ館の壁を本当にあちこちぶち抜くという改造を実施(閉じるドアもない)しており、通常の状態を知っているとより驚かされる。またデントン・コーカー・マーシャルの設計で新しくなったオーストラリア館は、黒い箱となって水辺との関係性を強く打ち出す。内部に入ると、本物の大きなプールがあって度肝を抜く。展示は同国におけるプール建築をテーマとするが、水に足を浸してくつろぎ、来場者にその場を楽しませる空間演出だった! 金獅子賞になったスペイン館は、未完成というテーマ、洗練させた展示インスタレーションもいいけれど、何より紹介されている作品群のデザインのクオリティが異常に高いことに感銘を受けた。かなりの数だったが、それらのレベルが一様に高く、説明があまりなくても、写真だけでも十分に記憶に残る造形力である。そして個人的に強く印象に残ったのは、ロシア館だった。ソ連が1930年代以降に開催してきた巨大博覧会の建築をたどる。ミースの高層ビルが登場する同時代にアナクロな古典主義ががんがんつくられており、完全に建築史の空白である。以前もロシア館は冷戦時代の秘密工場の展示をやったが、知らない歴史は本当に面白い。なお、ジャルディーニでは、日本館とベネズエラ館がリニューアル工事をしていた。前者は伊東豊雄事務所が関わり、後付けのスロープを側面に変えるなど、なるべく吉阪建築の原形をリスペクトした介入である。またベネズエラ館は以前よりもカルロ・スカルパのデザインがくっきりと感じられて、初々しい感じになった。

写真:左=上から、ドイツ館、穴があけられたドイツ館、オーストラリア館 右=上から、スペイン館、ロシア館、ベネズエラ館

2016/09/11(日)(五十嵐太郎)

第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館「en[縁]:アート・オブ・ネクサス」

会期:2016/05/28~2016/11/27

[イタリア、ヴェネチア]

日本館は数を絞り込む例年とは違い、10組以上が参加したが、展示のデザインを巧みにまとめていた。ただ、説明を読む観客はほとんどいない。短時間滞在で視覚的に記憶されるのは増田・大坪とヨコハマアパートメントだろうか。なお、1970年代に磯崎新が成功させた間(MA)展から約40年、21世紀になっても、「縁(en)」という日本古来のマジックワードを使って海外に効率的に売り出すというやり方は、変わらないのかという思いもある。筆者が2008年のビエンナーレにおいて、石上純也の温室を展示したとき、そういう説明はこちら側からしないと踏ん張ったのだが(それでも海外は日本的だと評価するけれど)。

2016/09/11(日)(五十嵐太郎)

第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 ジャルディーニ地区

会期:2016/05/28~2016/11/27

[イタリア、ヴェネチア]

ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2016のジャルディーニ会場へ。2014年のコールハースがディレクターだったときは、圧倒的な情報量で見るのが大変だったが、今年はだいぶ楽にまわれる。ただし、歴史的なリサーチを各国館に強いたのはクオリティを一定水準にする底上げ効果があったようで、館ごとのばらつきは大きい。ヨーロッパのパヴィリオンは難民問題を扱うものが複数見受けられた。これに対し、国家として難民受け入れの可能性が低く、近隣コミュニティの「縁(en)」を掲げた日本館は、日本らしいかもしれない。またチリの建築家がディレクターだったためか、全体的に非西洋圏のプロジェクトが目立ったことも、今回の特徴と言える。もっとも、内容・主張は別にして、単純に楽しめるかどうかで言うと、これまで見てきたビエンナーレのなかでは、今回の展示はあまり面白くない。建築の社会性を見せる展示はどうしても説明的になってしまうからだろう。

2016/09/11(日)(五十嵐太郎)

第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 会場外企画展示

会期:2016/05/28~2016/11/27

ジャルディーニ地区、アルセナーレ地区ほか[イタリア、ヴェネチア]

ビエンナーレの会場外の企画展示をまわる。台湾はいつものサン・マルコ広場横の場所を使い、今回はイリーガル・アーキテクチャー的なものも含む、都市観察によるメイド・イン・台湾を紹介していた。空間のインスタレーションも例年よりいい。またニュージーランドは、群島をテーマに島状に切り出した小さな台があちこちに浮遊し、それらの上に建築模型を載せる。

写真:左=台湾の展示 右=ニュージーランドの展示

2016/09/10(土)(五十嵐太郎)