artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

《白河データセンター》

[福島県]

日本設計による《白河データセンター》へ。山上に建ち、遠くからはわずかに屋上のソーラーチムニー群が見える。施設の性格上、空調がきわめて重要だが、人工的な空調だけで完結させず、季節によって外気を組み込み、エネルギー負荷をカバーする大胆なシステムをもつ。人のための建築ではなく、随時、拡張可能な情報の倉庫なので、しびれるようなシンプルなプランだ。内部は空間というより、呼吸する巨大な空調機械の中を歩くかのようだ。

2016/08/17(水)(五十嵐太郎)

《大木代吉本店》ほか

[福島県]

3.11のときに震災の被害が甚大だった福島県の矢吹町へ。岩堀未来、野上恵子、長尾亜子による《大木代吉本店》(酒蔵復興計画)を見学する。細長い敷地に並ぶ被災した20棟余の状況を調べ、杉板や赤瓦などの特徴を共有・維持しつつ、補強や再構築を行なう。特に商店街に面した店舗は小屋組を残す一方、その下部をほぼ入れ替え、合板の表情に変える。その後、酒蔵近くの《矢吹町みんなの家》へ。長尾+野上+腰原幹雄+矢吹町商工会が手がけたとんがり屋根のパヴィリオンである。屋根裏を見上げると、カラフルな不連続垂木がぎっしり。これでみんなの家はほぼコンプリートした。そばに酒蔵チーム+倉本剛、あるいはスタジオ・クハラ・ヤギらによる災害公営住宅群や太田浩史の集会施設が、道路を挟み展開している。

写真:左上2枚=《大木代吉本店》 左中下=クハラ・ヤギ 左下=酒蔵チーム 右上2枚=《福島矢吹町みんなの家》 右下=《第一区自治会館》

2016/08/17(水)(五十嵐太郎)

《希望ヶ丘プロジェクト》

[福島県]

郡山の《希望ヶ丘プロジェクトへ》。東日本大震災の仮設住宅を手がけた経験を踏まえ、解体・移築可能な木造の小規模コミニティモデルを提示する実験施設である。住棟をイメージした難波和彦の縦ログ構法と嶋影健一の在来パネル構法、ギャラリーとしてのはりゅうウッドスタジオによる丸太組構法、集会施設としての八木左千子のWOOD ALC構法、それぞれに個性的な四棟が角地に並び、中庭を囲む。

2016/08/17(水)(五十嵐太郎)

《ザ・リッツ・カールトン京都》

[京都府]

竣工:2014年

日建設計による《ザ・リッツ・カールトン京都》を見学する。ホテルフジタ跡地につくられたもので、最高の立地なのだが、近年さらに厳しくなっている高さ制限に加え、狭く、細長いという不利な敷地条件をもつ。しかし、これを逆手にとって、地下部分に飲食などのスペースをおさめながら徐々に降りて、奥へ奥へと引き込む空間を魅力的に構成している。名和晃平ほか、京都の現代美術家によるアートワークも館内に散りばめる。

2016/08/16(火)(五十嵐太郎)

男木島

[香川県]

二度目の男木島へ。大岩オスカールの《部屋の中の部屋》、漆の家プロジェクト、栗真由美の《記憶のボトル》、松本秋則《アキノリウム》、オンバ・ファクトリー、眞壁陸二らの作品をめぐる。が、ここはなんと言っても港から見える、斜面と坂道に沿って形成された独特な家屋群のかもし出す風景がかわいく、そこを歩く体験が素晴らしい。

写真:左上=男木島 左下=大岩オスカール《部屋の中の部屋》 右上=松本秋則《アキノリウム》

2016/08/15(月)(五十嵐太郎)