artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
ゴジラ展
会期:2016/07/15~2016/08/31
福岡市美術館[福岡県]
福岡市美の「ゴジラ展 大怪獣、創造の軌跡」へ。破壊するための建築や都市模型の制作、配置など、特撮の背景を紹介しており、興味深い内容だった。ただし、あまり古い資料はなく、詳細な図面やスケッチが多いのは、やはり近作である。展示の最後は、ゴジラが福岡市美を破壊する短い映像で締めくくる。この後、美術館はリニューアル工事に入り、再開は2年半後らしい。また常設エリアの「クロージング/リニューアル特別企画展 歴史する! Doing history!」では、1979年に福岡市美術館がオープンして以降、これまでの館の歴史をたどる。いつどの作品をいくらくらいの値段で購入したかなども振り返り、ダリやミロらの重要作品を獲得したエピソードに触れる。
2016/08/26(金)(五十嵐太郎)
HOUSE VISION 2 2016東京展
会期:2016/07/30~2016/08/28
お台場・青海駅前 特設会場[東京都]
ゆりかもめの青海駅で降りて、HOUSE VISION 2の会場へ。前回に比べて、外観がはっきりわかる独立した12棟の建築が展示されている。藤本壮介、アトリエ・ワン、五十嵐淳、長谷川豪、坂茂、永山祐子、谷尻誠、柴田文江、隈研吾らが企業と共同して、未来の住まいを探る企画だが、それぞれの個性もよく読み取れる。ただし、ゴーグルやiPadなどを使う展示もあったが、あまり情報量がない。少なくとも現時点では、実際の空間とそこに置かれたモノが発する情報量の方が圧倒的に大きい。建築こそが生活情報のパッケージになっている。
写真:左=藤本壮介 右上=会場風景(左:アトリエ・ワン、右:永山祐子) 右下=長谷川豪
2016/08/24(水)(五十嵐太郎)
《七ヶ浜町遠山保育所》《七ヶ浜町立七ヶ浜中学校》
[宮城県]
七ヶ浜へ。高橋一平による《遠山保育所》は、三度目の訪問である。ルーズさを許容する原っぱみたいな中庭がいい味を出す。建物の高さを低く抑えているので、その分よけいに中庭が広く見える効果をもたらし、また空が大きく視界に入る。外壁のステンレスの鏡面は最初驚くが、周囲や自然を映し込み、やがてなじんでいく。続いて、乾久美子による《七ヶ浜中学校》を再訪すると、隣のグラウンドにあった仮設住宅群は消えていた。中庭をもつ単位を隅でつなぎ、連結部分に共有空間を置き、斜め方向に視線が伸びていく。透明で開放的な建築である。教室のモジュールで処理できないさまざまな用途のリトルスペースが内外にあちこち張り出す感覚は、必要に応じて増築した学校のようだ。
写真:上=《七ヶ浜町遠山保育所》 下=《七ヶ浜町立七ヶ浜中学校》
2016/08/22(月)(五十嵐太郎)
《千年希望の丘》《玉浦西災害公営住宅》
[宮城県]
岩沼市へ。津波に耐えた石蔵などの震災遺構も残るランドスケープ=《千年希望の丘》を見てから、手島浩之による《玉浦西災害公営住宅》を訪問する。道路側ではない内側のデッキからのアクセス、田の字プランの回転による配置計画などによってコミュニティの形成を図る。玉浦の集団移転の全体は、地元出身の石川幹子が入り、貞山緑道が各エリアを貫く特徴的な計画がなされている。
写真:上=津波に耐えた石蔵 下=《玉浦西災害公営住宅》
2016/08/22(月)(五十嵐太郎)
「直島建築+The Naoshima Plan」直島建築シンポジウム
[香川県]
2週続けての直島訪問を行なう。物理的に日帰りは可能だが、もったいない行程である。フェリーから浅田彰氏と合流し、船上で建築の四方山話をしてから、槻橋修が監修した直島建築展を契機に企画されたシンポジウムに登壇する。話題のひとつは初期の石井和紘による建築の再評価だった。そして新時代を象徴する三分一博志の位置づけである。彼の建築は目ではなく、肌で感じる空間だろう。しかし、瀬戸内国際芸術祭といい、あいちトリエンナーレといい、春秋ならもっと楽なのに、わざわざ酷暑のなか、こうアート作品をめぐる体験。ジャンルは違うけど、真夏の野外フェスに似ているかもしれない。若手の新人から大御所まで、いろんなアーティストをつまみ食い的にも体験できるところも同じだ。
2016/08/20(土)(五十嵐太郎)