artscapeレビュー

シン・ゴジラ

2016年09月15日号

『シン・ゴジラ』は、1954年に発表されたシリーズ第1作の恐怖と崇高性を蘇らせた傑作である。特に自衛隊の迎撃にはただ歩き続けるだけだったゴジラが、米軍の攻撃には激昂し、停電になった闇の東京を焼くつくし、超高層ビルを切り裂き、やがて停止する、庵野秀明節の絶望的なまでに美しいシーン。これは日本映画史に残る。現代日本で再生した新しい怪獣映画は、津波破壊と原発事故後の想像力、安全保障をめぐる国内外の政治ドラマ、緩慢な動きと静止した立像に加え、うんざりするほど続くスペクタクルではない、限定的かつ効果的な見せ場が効いている。また、この手のジャンルにありがちな家族や恋人の個人の物語に収束させないこともよかった。

2016/08/01(月)(五十嵐太郎)

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