artscapeレビュー

シン・ゴジラ

2016年08月15日号

『シン・ゴジラ』は、1954年に初めてゴジラが登場した第1作の恐怖と崇高性を蘇らせた傑作である。津波破壊と原発事故後の想像力、安全保障をめぐる国内外の政治ドラマ、緩急の差が激しい動きと静止した立像、おそらく経済的な理由によるものだが、うんざりするほど続くスペクタクルではない限定的かつ効果的な見せ場などが印象的だった。特に自衛隊の攻撃には反応せず、アメリカ軍の攻撃で逆鱗に触れて、東京の高層ビルだけが集中的に破壊される深夜のシーンが美しい。これは家族や恋人の個人の物語に収束させない、現代日本の新しい怪獣映画である。

2016/07/31(日)(五十嵐太郎)

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