artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
クラトン(王宮)
[インドネシア、ジョグジャカルタ]
ジョグジャカルタの王宮を見学する。どちらか一本が強いのではなく、南北と東西の軸線が絡みあいながら、平屋を配置、連結させていく。とにかく壁が少なく、ここも開放的である。18世紀の建設だが、その後の近代化も混入し、レールやトタンの庇増築も見受けられる。木造架構で興味深いのは、梁を増やすが、上から吊るものが存在していることだった。
2016/03/31(木)(五十嵐太郎)
復興住宅コアハウス
[インドネシア]
続いて、イカプトラが手がけた近くの復興住宅コアハウスのエリアを案内していただく。地震で組積の家が壊滅し、住民に強い家のつくり方を教えながら、最低限のコアをもつ家を建設する。その後は各自が必要に応じて増築するシステムで、多様に展開していた。東日本大震災の後、日本でもコアハウスは提案されたが、インドネシアのようにうまく展開しなかった背景を考えさせられる。
写真:左上=イカプトラ先生、左下・右列=復興住宅コアハウス
2016/03/31(木)(五十嵐太郎)
イカプトラ邸
[インドネシア]
最終日は、UGMの先生でもあるイカプトラ邸へ。これも開放的で、ジョグジャカルタらしく古材を利用し、ラジオ、電話やホーロー看板のコレクションで楽しい空間だった。これはさらに増築を重ね、図書室や公共トイレを設け、周辺のコミュニティの核となることを目指す、みんなの家でもある。今回、あまり公共施設を見学しなかったが、民間で興味深いプロジェクトが多いことから、お上に頼らない、自助精神が感じられる。
2016/03/31(木)(五十嵐太郎)
《Lindu Prasekti邸》
[インドネシア]
《Lindu Prasekti邸》は、アーティストが自分で設計した住宅である。これもリサイクル材を使う建築だが、Romoの手法とは逆で、クリアなヴィジョンをもち、あるべきところにモノが収まっている建築的な空間だった。下手をすると、単に古材を利用したキッチュな家になりがちだが、ハイセンスでまとめており感心する。
2016/03/30(水)(五十嵐太郎)
Romo Mangunwijayaのオフィス
[インドネシア]
Romo Mangunwijayaのオフィスは、《Wisma Salam》と同様、通常の建築の理解を拒否する空間だった。リサイクル素材による超迷宮的な増築旅館のようである。空間がこんがらがっており、圧倒的に強烈な個性を放つ。カリスマ的な彼の難解な著作は、インドネシアの建築学生にとって必読書になっているという。なお、カンポンのプロジェクトが評価されて、1990年代にアガ・カーン建築賞を受賞した建築家でもある。
2016/03/30(水)(五十嵐太郎)