artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
「建築と音楽」展
会期:2016/03/18~2016/04/28
北京建築大学 ADA画廊[中国、北京]
街中の北京建築大学へ。キャンパスにあるADA画廊の「建築と音楽」展を鑑賞した。王昀がさまざまな図形楽譜をもとに建築化を試みる模型を展示している。いずれも屋根がなく、かつての使い方を想像させる遺跡のようだった。なお、ここでは同大学の批評家・キュレーターの方振寧が関与し、過去にル・コルビュジエ、中国とフルクサス、マレーヴィチ展などを開催しており、こういう施設が大学にあるのは羨ましい。
王昀の研究室では、最近の仕事として蘇州古典園林庭園を抽象化し、現代建築的な構成に変容させる試み、世界の集落配置図を抽象絵画のように描く絵画シリーズなどを見せてもらう。いずれも何々と建築をつなぐ精力的な活動である。
写真:左上から、《北京建築大学》、「建築と音楽」展、図形楽譜の建築化 右上から、ADAギャラリー、王氏の研究室、蘇州庭園の抽象化、図形楽譜の建築化
2016/04/15(金)(五十嵐太郎)
《北京建築大学 新キャンパス》
[中国]
2週連続の中国出張となったが、再び北京に到着し、郊外の北京建築大学の新キャンパスに直行する。王昀が実現した1/1の模型としての長さ48mのパヴィリオンを見学した。エリック・サティの楽譜の一部を切り取り、そのまま図面化したものである。現場を体験すると、音が大きく反響する興味深い空間が生まれていた。ガラスはなく、躯体だけ完成しており、これから、あるいはかつて家だったような建築の祖型になっている。
2016/04/15(金)(五十嵐太郎)
《南京博物院》
南京博物院[中国、南京]
学芸員に《南京博物院》を案内していただく。コンペを行なったものの、審査側の梁思成が設計に深く関与し、遼の時代様式を採用したという。なるほど、梁が両サイドで上に曲がっていく、独特のカーブだ。その後、周辺環境の変化に合わせ、建物の高さを上げている。さすがに歴史の展示が充実していた。また地下にデジタル・コーナーや中華民国ノスタルジーを演出するテーマパーク的なエリアも新設し、昔の町並みが再現されている。夕方、大砲など兵器の歴史が陳列された見晴らしのいい城壁の上を歩く。最後に東南大学を訪問し、ここで3.11以降の日本建築の動向についてレクチャーと質疑応答を行なう。
写真:左、右上=《南京博物院》 右下=《東南大学》
2016/04/10(日)(五十嵐太郎)
南京
[中国、南京]
都市をまわると、昔の城壁がよく残っており、さすがに歴史のある古都だと感じさせる。また、近代における国民政府の時代をしのばせる建築や太平天国ゆかりの場所も少なくない。昼は市内の巨大再開発によるショッピングモールにおいて、人気の美味しい地元料理を味わう。ここは地上部分に古い映画館の外装のみ保存されていた。その後、中山陵に向かい、大階段をひたすら登る。南京駅と同様、巨大なスケールに中国らしさを感じる。
写真:左上4枚=城壁、左下=《総統府》 右上=ショッピングモール、右中2枚=《中山陵》、右下2枚=《南京南駅》
2016/04/10(日)(五十嵐太郎)
南京大虐殺紀念館
[中国、南京]
南京大虐殺紀念館を見学した。人骨の発掘現場を囲む第1期は、ランドスケープ的な空間で物静かである。現在、その両サイドに第2期の拡張エリアが継ぎ足されており、導入部はリベスキンド風の鋭角的なデザインによる地下の空間において大量の資料を展示する。悲劇からその克服という流れは、四川大地震の記念館の構成とも似ている。さらに、細い柱が林立する第3期の増築エリアを建設中だった。ここも入場無料であり、多くの中国人観光客が集まって、ひっきりなしに人の波が続いていた。動員+メモリアルが融合した場である。
2016/04/10(日)(五十嵐太郎)