artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
《Rumah Miring/Slanted House》
[インドネシア、ジャカルタ]
竣工:2015年
最後はブディ・プラドノの設計した《Rumah Miring/Slanted House》を訪問する。傾いたビルサイズの鉄骨のフレームにガラスの空間をはめ込む。ギャラリストがオーナーであり、随所にアートを展示し、1階の吹き放ちにオープンキッチンやプールを設け、パーティなどに対応する。巨大津波の後、インドネシアのアートシーンは変化したのかと質問すると、ほとんど関係ないという。そしてインドネシアは世界一幸せに暮らしている人たちだと付け加える。日本は深刻に考えすぎなのかもしれない。
2016/03/27(日)(五十嵐太郎)
《Andra Matin House》
[インドネシア、ジャカルタ]
インドネシアの現代建築のキーパーソンであるAndra Matinの自邸を訪問した。GAの雑誌やギャラリーでも紹介されているが、素晴らしいトロピカル・モダンの空間である。近代建築の基本的な手法をベースとしながら、長居したくなる気持ちのいい開放的な場所や親密なスケール感の空間をあちこちに生む。完全に閉じない内部、プール、鏡、造園などの技も効く。彼の自邸のすぐそばには、魅力的にリノベーションした設計事務所やカフェ・ギャラリー(彼の作品を展示中)、緑地があり、交通渋滞に悩まされない理想的な生活環境を構築している。逆に公共交通機関が整備されていないがゆえの都市の喧騒と混乱は、なるほどコールハースが子どものときにジャカルタで暮らしていた背景を納得できる。
写真:左=上から、Andra Matin自邸外観、内観、屋上、右=上から、Andra Matin事務所、カフェ・ギャラリー
2016/03/27(日)(五十嵐太郎)
Tanah Teduh
[インドネシア、ジャカルタ]
昼食後にTANA TEDUHを見学する。2012年にオープンした2haに及ぶ、ゲーテッド・コミュニティ的な高級住宅地の開発であり、10名の建築家が20棟のモダン住宅を設計している。緑豊かな自然の環境において、それらと交感する空間の数々に魅了される。暖かい気候ゆえに、壁で完全に密閉せず、リテラルに外部であり内部である領域を効果的に組み込む。気密性が騒がれる日本では許されない、おおらかなディテールだろう。
2016/03/27(日)(五十嵐太郎)
海洋博物館(旧東インド会社スパイス倉庫)、インドネシア銀行博物館(旧中央銀行)ほか
[インドネシア、ジャカルタ]
2日目の朝は、再びコタ地区から街をまわる。昨日の人出が嘘のようだ。まず再開発で移動させられる予定の木造の大型船が並ぶ船着場を見学し、続いて18世紀の倉庫を転用した海洋博物館を訪れる。船の模型をただ並べた素っ気ないミュージアムだが、瓦の隙間から光が漏れる、何も置いてないないロフト空間がカッコいい。旧中央銀行のインドネシア銀行博物館は、お金があった時代の贅沢な建築を現在にまで保存している。全周にバルコニーを張りめぐらす、熱帯ならではの工夫だ。そして食材で溢れかえったチャイナタウンを歩く。
写真:左=上から、船着場、海洋博物館外観、海洋博物館ロフト、海洋博物館近くのマーケット、右=上から、銀行博物館外観、銀行博物館内観、チャイナタウン
2016/03/27(日)(五十嵐太郎)
コタ地区(旧バタビア)
[インドネシア、ジャカルタ]
ジャカルタに到着し、研究室のメンバーと合流し、留学生のハリーさん、ミルザさんの案内で街をまわる。オランダ時代の建築が群として残るコタ地区は、土曜の夜のため、ものすごい人出だった。桜と酒なしで毎週末に花見をやっているような感じと言うべきか。特にあまり照明がない暗がりの中で、ところ狭しと地べたに座って歓談している若者に占拠された、旧市庁舎前の広場の使い倒し方がすごい。おそらく、ここを最初に都市計画したオランダの人が目撃したら、びっくりするだろう。
写真:左上=ジャカルタ旧市庁舎前、左下・右上=ジャカルタ駅
2016/03/26(土)(五十嵐太郎)