artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
スタジオ・トントン
[インドネシア、ジャカルタ]
次に隈研吾と共同プロジェクトが進行中のスタジオ・トントンを訪問する。現地で驚いたのは、ゴルフコースに幾つかの住宅が建ち、その向かいに事務所が存在したこと。光や風、水の音などの自然のささやかな変化を受け止める透明で白い建築は、日本の現代建築とも共通している。ガラス張りの浮かせた模型室など、増築の仕方も興味深い。彼らの本も素晴らしいデザインだった。
写真:左=上から、スタジオ・トントン外観、天井、右=上から、天井、打ち合わせ室、模型室
2016/03/29(火)(五十嵐太郎)
ビナス幼稚園、小学校
[インドネシア、ジャカルタ]
Dentonによるビナス幼稚園と小学校を見学する。ジャカルタ南部に建設された中高まで一貫のインターナショナルスクールであり、隣のゲーテッテッドコミュニティと同様、周囲に対して完全に閉じる。ポツ窓とカラフルなヴォリュームの操作が印象的な外観だが、内部空間にあまり貢献していないのは残念だった。とはいえ、広報的なインパクトは大きそうなデザインである。
写真:左列=ビナス幼稚園、小学校外観、右=上から、教室、図書室、食堂
2016/03/29(火)(五十嵐太郎)
コミュニタス・サリハラほか
[インドネシア、ジャカルタ]
コミュニタス・サリハラは、民間のアート複合施設である。ANDRAによる事務棟、Adi Purnomoのフレキシブルな小劇場、Markoの円形のギャラリー、そして案内していただいたDanny Wicaksonoの複合施設が、立体的に連結しながら、それぞれのデザインの個性を発揮している。Dannyが手がけたのは4番目に完成したもので、従業員の居住棟、そしてダンスや音楽の練習や録音のスタジオ、レジデンスなどを縦に積む。階段やエレベータなど、上下の動線を完全に外部化するという思い切った工夫がなされていることに驚かされた。複雑な規制から導かれたデザインだが、暖かい気候だからこそ可能なゆるやかな空間である。隣棟とは屋上庭園も連結していた。3日目の最後は、Andra Matinが最初に手がけたプロジェクト、リノベーションによるギャラリー、カフェ、デザイン・オフィス、店舗の複合施設を訪れた。ここでも完全に閉じない、すなわち隙間が許される空間のあり方が自由でうらやましい。インドネシアの政治が変わった象徴的な1998年に誕生し、アートや建築の新しい運動に大きく貢献した歴史的な場所でもある。
写真:左=上から、サリハラ概観、Andra Matinによる事務棟、Adi Purnomoによる小劇場、右列=Dannyによる複合施設
2016/03/28(月)(五十嵐太郎)
ARTOTEL
[インドネシア、ジャカルタ]
ARTOTELは、abodayが設計した建築に、アーティストの作品を重ねたプロジェクトである。正面や側面の壁は巨大なグラフィティーで覆われ、各フロアで異なる作家が内装を担当する。また螺旋階段で登ったフロアに、若手を紹介するギャラリーを設ける。屋上は写真家が関与していた。見学後、その隣の古い教会に立ち寄る。幕を張り出して庇を設ける仮設的な増築が軽やかでいい。
写真:左=上から、ArtOtel外観、内観、右=上から、螺旋階段、ギャラリー、教会
2016/03/28(月)(五十嵐太郎)
《Studi-o Cahaya》ほか
[インドネシア、ジャカルタ]
竣工:2009年
ジャカルタの3日目は、まずMamostudioが設計した《Studi-o Cahaya》へ。正面が大型店舗のため、周囲に対しては閉じつつ、内部は斜めの壁を組み合わせ、時間に応じてさまざまな場所から天光を導く。リタイアした医者が施主であり、アートコレクターのため、ほとんど美術館のような空間だった。Cahayaでは、室内に水をめぐらせ、両サイドからその音に挟まれながら、伝統音楽をプレーヤーにかけて、親戚の子状態で、お昼をご馳走になり、ついつい長居してしまう。国立博物館は、オリジナルの古典主義の右側にその複製をつくり、ツイン建築とし、さらに背後に巨大なヴォリュームを増築している。
写真:左列=《Studi-o Cahaya》、右列=国立博物館
2016/03/28(月)(五十嵐太郎)