artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
陸前高田のたからもの
会期:2016/02/27~2016/03/27
名古屋市博物館[愛知県]
名古屋市博物館の「陸前高田のたからもの」展へ。3.11で被災した陸前高田の博物館の資料を紹介。その修復の方法や文化財レスキューの状況も。現在、博物館は廃校で修復を継続中。モノだけでなく、津波でコンピュータがやられ、所蔵リストのデジタルデータを失ったことも博物館として多大なダメージ。
2016/02/28(日)(五十嵐太郎)
アーツ・チャレンジ2016(あいちアートプログラム──虹のキャラヴァンサライに向けて)
会期:2016/02/23~2016/03/06
愛知芸術文化センター[愛知県]
審査を担当したアーツチャレンジ2016は、愛知芸術文化センターの正式展示スペース以外の空間を使う公募である。1~3回目、去年と今回も関わったので経緯を見てきたが、クオリティが高く、安定性の高い作品の展覧会に成長した。が、あえて欲を言えば、ひとつくらい思い切ったチャンレジをして、ときには失敗するような問題作が入ってもよかったかもしれない。印象に残った作品をいくつか。
地下階段の宮本宗は、人工補綴としてのクレーン+身体の大型インスタレーションの力作である。照沼敦朗は、カーマニアの自身を投影したミエテルノゾム君を軸に絵画、彫刻、映像を展開。棒読みラップのアニメが強烈だった。
水野里奈は、味覚→視覚の変換を提示するが、あいちトリエンナーレ2013、VOCA、豊川で見た絵画から進化し、複数の空間を重層的にたたみ込む表現が感じられて、そこが興味深い。11階のL字回廊の田口友里衣は、小さなガラス玉と石によるささやかな庭を設置し、それが屋外のビル群と共鳴する。
伊藤久也は、悪のカタチをワークショップによってさまざまな人に制作してもらう作品だが、参加者から語られる言葉が面白い。池谷保の絵は、目を突き刺す棘のようなテクスチャに覆われた表面である。一方、大崎土夢はマチエールの勝負ではなく、かたちと内容のズレが連鎖しながら、複数の絵画がさまざまな関係性を構築していく知的な空間をつくる。
写真:左=上から、宮本宗、照沼敦朗、水野里奈 右=上から、田口友里衣、伊藤久也、池谷保、大崎土夢
2016/02/27(土)(五十嵐太郎)
コレクション展「1945年からのシュルレアリスム」
愛知県美術館[愛知県]
愛知県美術館の常設もよかった。名古屋を軸に「1945年からのシュルレアリスム」を紹介するが、暗い感じの四畳半シュルレアリスムは日本的だと思う。また若手紹介企画の水戸部七絵が強烈だった。部屋内に作品がひとつだけ。以前、アーツ千代田で見た絵から進化し、もはや絵画の概念を超えるモリモリの巨大肖像物に変容していた。
2016/02/27(土)(五十嵐太郎)
「ピカソ、天才の秘密」展
会期:2016/01/03~2016/03/21
愛知県美術館[愛知県]
先日、宮城県美術館でやっていた展示の巡回かと思いきや、まったく別企画だった。いわゆるピカソらしいキュビスムの絵になる前の10代の子どものときの正確なスケッチから、青の時代、バラ色の時代までに焦点を当てる。ここを切り出すと、1901年からの約10年の変化と成果のすごさが浮き彫りになる。
2016/02/27(土)(五十嵐太郎)
となりの人びと──現代美術in春日井
会期:2016/01/30~2016/02/28
文化フォーラム春日井、まちなか会場(丸十ビル・元薬局・蔵)[愛知県]
名古屋へ。トリエンナーレの地域展開事業である現代美術in春日井「となりの人びと」展へ。モバイルトリエンナーレの会場になった文化フォーラム春日井では、設楽陸、竹田尚史、今井俊介、鋤柄ふくみらの作品が展示されていた。結構、多くの人が来ていたことに感心する。今回、春日井では徒歩圏で移動できるまちなか会場も設定され、丸十ビル、蔵、元薬局も訪れる。村田仁は、蔵の前で耳を傾ける音のインスタレーション。大崎のぶゆきと森北伸のユニット144号室は、部屋の中に空間をつくる。また大崎はある人物の記憶の痕跡や変容をたどるインスタレーションを行なう。
写真:左=上から、設楽陸、竹田尚史、今井俊介、鋤柄ふくみ 右=上から、村田仁、大崎のぶゆき、大崎のぶゆきと森北伸のユニット
2016/02/27(土)(五十嵐太郎)