artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
A Japanese Constellation: Toyo Ito, SANNA, and Beyond
会期:2016/03/13~2016/07/04
MoMA(ニューヨーク近代美術館)[アメリカ、ニューヨーク]
ニューヨークに到着し、MoMAの「A Japanese Constellation」展を見る。同館で特定の国に限定した建築展は過去にほとんど例がなく、日本の建築家に焦点を当てた企画は初めてらしい。展示は伊東豊雄で始まり、《せんだいメディアテーク》から《台中国立歌劇院》までを紹介する。その後は伊東スクールが続く。次にSANAAと妹島和世の展示エリアが設けられ、次に西沢立衛が間に入って、若手として石上純也、藤本壮介、平田晃久が三列で奥に並ぶ。こうした師弟関係の系譜を描けるのは、海外ではあまり例がなく、おそらく日本の建築界の特徴だろう。映像はややぼやけてしまうが、白く薄い三重の膜で仕切り、プロジェクションを行なう展示が美しい。そして展示の最後は、みんなの家のプロジェクト群である。最近いつも寒い時期にニューヨークに滞在したが、3月はいい天気で、中庭に多くの人が和む。ほかの企画としては、マルセル・ブロータス、戦争、写真、ジャクソン・ポロック、エンドレス・ハウス(準備中)などが行なわれていた。日本人では、志賀理江子の螺旋海岸シリーズの一部が展示され、いつものように床置きとなっていた。
写真:左=上から、A Japanese Constellation入り口、伊東豊雄、SANAA、石上純也、藤本壮介、平田晃久、右=上から、みんなの家プロジェクト群、マルセル・ブロータス、ジャクソン・ポロック、志賀理江子
2016/03/09(水)(五十嵐太郎)
中国建築家連続講義第2回 朱濤:梁思成とその時代──〈中国近代建築〉はいかに生まれたか?
会期:2016/03/08
シバウラハウス5階バードルーム[東京都]
香港から招いた朱濤によるレクチャー「梁思成とその時代」をシバウラハウスで行なう。これまで断片的な知識しかなかった中国の建築史家、梁思成のイメージをようやくつかむ。近代は新しい時代を創造すると同時に起源への探求と大きな物語=歴史を行なうが、中国では彼がその役割を担う。20世紀初頭に梁思成と妻の林徽因が唐代を理想的な過去とし、フランス19世紀のように、ゴシック建築と重ねて構造的な合理性を説きながら、モダニズムとの類似を論じた。これを伊東忠太が美学的な比例論から法隆寺を古典主義のパルテノン神殿と比較して持ち上げたことに比べると興味深い。梁思成は、中華人民共和国の成立後、十大建築ほか、国家の方針に翻弄されつつ、天安門広場の改造とは別の立場をとっている。またコロニアリズムとみなして、日本による近代建築や外国の様式建築を嫌ったという。ところで、梁と林は、中国建築の特徴として巨大さを挙げなかったが、日本からその源流の中国建築を見ると、古代から現代まで日本とのスケール感の違いは圧倒的だと思う。
2016/03/08(火)(五十嵐太郎)
せんだいデザインリーグ2016 エスキス塾
会期:2016/03/07
せんだいメディアテーク 5Fギャラリー3300ホワイエ[宮城県]
せんだいデザインリーグの会場を朝9時からまわり、午後の新企画、エスキス塾の追加候補の作品を選ぶが、もう仙台を離れた学生も多く、実際にはほとんど増えなかった。エスキス塾では、4時間30分かけて、堀井義博さんと二人で頭をフル回転しながら作品を講評し、その後は懇親会も行なう。相手は40名弱である。大変なイベントだったが、デザインリーグのファイナルではわずか10名しか選ばれないわけだから、埋もれていた各地の学生の作品に出会うことができてよかった。
2016/03/07(月)(五十嵐太郎)
《つながりの家》(自邸)
[福島県]
審査の途中、時間に余裕があったので、郡山の前原尚貴の事務所兼自邸へ。抜き打ちのような感じになったが、立体的に小空間が楽しく連結する建築だった。最後は仙台のJIAの事務所にて、劇団の家を住宅大賞に決定する。これで手島氏は二度目の大賞となった。
2016/03/06(日)(五十嵐太郎)
《△の家》
[福島県]
福島に移動し、最後の作品となるLife style 工房の《△の家》へ。ツーバイ材をひたすら組むシンプルかつ強力な形式の△の合掌屋根をつくり、その内部にウェーブする延長した土間としてのインナーテラスを導入し、光の効果をつくる。自主施工ゆえに可能なシステムかもしれない。アヴァンギャルドな造形に思えたが、実際は農村地においてわりと景色に馴染む。また豪雪を意識したプリミティブな建築でもある。
2016/03/06(日)(五十嵐太郎)