artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

500m美術館vol.17 The 4th Sapporo 500m Gallery Award! Exhibition

会期:2016/01/30~2016/03/25

札幌大通地下ギャラリー500m美術館[北海道]

札幌にて近代の建築、永照寺や新栄寺大師堂などを見ていたら、雪が降ってきたので、地下街を散策する。最後は500m美術館にたどり着く。ギャラリーアワードの展示を開催中だった。高田洋三による雪まつりの制作風景の異化的な写真と、山崎阿弥による大量の紙を使った壁面を這うような長大なインスタレーションが設置されていた。それにしても、500mということは、村上隆の五百羅漢でも十分に足りる長さである。

写真:左上=新栄寺、左下=高田洋三 右=山崎阿弥

2016/02/26(金)(五十嵐太郎)

小樽の近代建築

[北海道]

北海道へ。小樽に行くのは学生のとき以来か。ここでも外国人の観光客が多いことに驚かされる。エキゾチックな街並みが残っているのは、1890年代から1910年代頃に貿易や商業で栄え、その時期につくられた近代建築がかなり残ったことが要因だろう。が、当時、辰野金吾や佐立七次郎らの前衛に設計を依頼した先進性が、いまの北海道の行政や施主にあるのだろうかと思うと、心もとない。小樽の近代建築は、明治末において洋風のバタくさい啓蒙的な存在だったはずだ。しかし、時を経て、キャラ変が起き、レトロなメルヘン建築に認定される。加えて、観光目的に擬近代建築が新しく参入し、本物が混ざったテーマパークの様相を呈している。それだけに、純モダニズムの文学館・美術館は清々しい。

写真:左=上から、旧北海道拓殖銀行小樽支店、日本銀行旧小樽支店、旧三井銀行小樽支店、旧日本郵船小樽支店 右=上から、小樽オルゴール堂堺町店、小樽オルゴール堂本館、小樽駅、小樽文学館・美術館

2016/02/25(木)(五十嵐太郎)

コアハウス

[宮城県]

竣工:2012年

牡鹿半島へ。アーキエイド、塚本由晴らによる《コアハウス》を再訪する。福島では《コアハウス》のシステムが活用されている。敷地のお寺では再建工事が進行中だった。この先にスタジオ・ムンバイの《夏の家》が移築されている。女川は訪れる度に劇的に風景が変化している。かさ上げで地形が変わり、道路や街区のパターンも変わり、震災遺構は交番ひとつだけ。坂茂による駅前には新しくアウトレットモールのような商業空間が出現し、まるで別の街である。本当に昔の様子をしのばせるものがほとんど消えてしまった。仙台に戻る途中、石巻において門脇小に立ち寄る。焼けた建物には覆いがかぶさったまままだ。手前の住宅地跡はかさ上げで埋もれようとしている。が、3.11直後にコンビニの跡地に掲げられた「がんばろう石巻」の場所だけが残っていた。近づくと矢印で案内も出ており、被災を証言する数少ない巡礼地に格上げされている。

写真:左=上から、《コアハウス》、女川駅 右=上から、女川駅前交番、女川駅前商業空間、看板「がんばろう石巻」

2016/02/24(水)(五十嵐太郎)

震災被災地めぐり

[宮城県]

ドイツの建築家、地方紙の記者とともに、被災地をまわる。最初に伊東豊雄による《みんなの家》、第一号を再訪した。公園のなかの仮説住宅地で、最初はいっぱいだったが、多くの住民はすでに次の生活へ移行し、かなりここを出ているようだ。ひと気があまりない。続いて、七ヶ浜へ。コンペのときに審査員を担当した乾久美子の七ヶ浜中学校に立ち寄るが、職員が対応できない日とぶつかり、外観のみを見学した。それでも小さなスケール感や透明感を把握することはできる。次に高橋一平の遠山保育所を再訪する。まわりの家より低いスケール感が、中学校と共通している。新しく海辺にできた妹島和世による月浜の波打つ《みんなの家》へ。漁業施設を支援するものだが、目の前でコンクリートの土木工事が進む。ここでも居住者なしに壁が出現する。ほかに大西麻貴の東松島の子供の家(まわりにかわいらしいデザインの雰囲気が拡張していたのが微笑ましかった)、妹島の宮戸島の《みんなの家》を再訪した。いずれも仮設住宅地は閑散としてきた。

写真:左=上から、《みんなの家》、七ヶ浜中学校、遠山保育所 右=上から、子供の家、月浜の《みんなの家》、宮戸島の《みんなの家》

2016/02/24(水)(五十嵐太郎)

ようこそ日本へ:1920-30年代のツーリズムとデザイン

会期:2016/01/19~2016/02/28

東京国立近代美術館[東京都]

近年、国立近美の常設は攻めの姿勢を感じるが、今回は建築の動向に絡めて、全室を構成していた。改めて篠原一男、吉田五十八、吉村順三など、(主に日本)画家が建築家に住宅を依頼していた歴史を痛感する。一方で、現在はどうなのだろうかと思う。「ようこそ日本へ」展は、戦前の資料を多く紹介しながら、ツーリズムとデザインの関係を扱う。テーマの設定が国策に沿う企画は少し気になってしまうが、内容は面白いものだった。

2016/02/22(月)(五十嵐太郎)