artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
レーモンドホール(旧三重県立大学図書館)
[三重県]
竣工:1951年、移築:1969年
JIA主催のシンポジウムで登壇するため、三重の津市に向かう。開始まで少し時間に余裕があったことから、三重大学で保存されているレーモンドホールを訪れた。あいにく閉鎖中であり、カーテンによって内部も隠されていたが、透明感あふれる木造のモダニズムなのは十分にうかがえる。おそらく、建築が小さいからこそ、キャンパスの隅に残すことができたのではないかと推測するが、地元の大学が、こうした1950年代の建築を保存しているのはよいことだ。
2016/02/06(土)(五十嵐太郎)
第10回 shiseido art egg「川久保ジョイ展〈インスタレーション〉」
会期:2016/02/03~2016/02/26
資生堂ギャラリー[東京都]
資生堂ギャラリーへ。川久保ジョイ展は、やはり放射線を感知したフィルムの作品が紹介されていたが、個人的に興味をもったのは、壁の白い塗装をはがしてコンクリート面を露出させる試みのほうである。1階のウィンドウでは、中村竜治によるディスプレイ作品の「風景」が設置されていた。厚さ9ミリの針葉樹合板を積層させて、それが自然に導くジグザグの形状をつくるという小さな建築である。また資生堂銀座ビルでは、花椿のロゴのデザインの変遷を紹介する「百花椿図」展が開催されていた。
写真:左上=川久保ジョイ展、左下・右=中村竜治「風景」
2016/02/03(水)(五十嵐太郎)
NODA・MAP第20回公演「逆鱗」
会期:2016/01/29~2016/03/13
東京藝術劇場プレイハウス[東京都]
松たか子、瑛太らのキャスティングで華々しいが、前半はコミカルかつシュール、そして言葉遊びによる人魚と水族館の話で謎めいており、物語の流れがよく見えない。人魚が生成する解釈もとても奇妙である。だが、後半はベタに1945年の太平洋戦争の世界に転換する。人魚とは「人*魚*」だったのかと膝を打つ。ここで前半の寓意的な伏線が一気に氷解し、悲壮だが、美しい水底の終焉へとなだれ込む。
2016/02/02(火)(五十嵐太郎)
ON-MYAKU2016 ─see/do/be tone─
会期:2016/01/30~2016/01/31
東京文化会館[東京都]
白井剛×中川賢一×堀井哲史「ON-MYAKU2016」@東京文化会館。現代音楽の教科書的な作品も散りばめられた中川のピアノに白井のダンスが呼応し、両者の動きを堀井が映像化する。さまざまなバリエーションでの実験的な試みが行なわれた。「ピアノ・フェイズ」では、白井が反転された自身の遅延映像と共に踊るのが圧巻だった。
2016/01/31(日)(五十嵐太郎)
ロームシアター京都
[京都府]
香山壽夫が再整備にかかわったロームシアター京都へ。やはり遠くから見るとフライタワーが突き出ている部分は、元の前川國男の京都会館とぶつかるヴォリューム感である。ただ、近づくと、やはりリノベーションならではの不思議な空間が発生しており、面白い建築である。むしろ驚いたのは、蔦屋書店+スタバ、コンビニ、おしゃれレストランの存在だった。これが21世紀の公共施設の姿になっていくのだろうか?
2016/01/31(日)(五十嵐太郎)