artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
クリード チャンプを継ぐ男
新星監督による映画『クリード』を見る。一度終わったはずのロッキーのシリーズを再稼動させる巧みな設定と展開、そしてワンシーンによる試合の撮影などがお見事だ。『ロッキー1』の反復もあるが、シリーズの40年に及ぶ歴史があるからこそ、物語世界の実在感が、ぐっと増し、メタ的にもレガシーを継ぐ傑作になっている。パズルのように構築された『スターウォーズ7』に対し、不意打ちのように現われた新機軸のリブートだ。
2016/01/10(日)(五十嵐太郎)
幹の会+リリック プロデュース公演「王女メディア」
会期:2016/01/09~2016/01/16
東京グローブ座[東京都]
ギリシア悲劇「王女メディア」@グローブ座。歌舞伎のように男がすべての女性を演じる。主役をつとめる平幹二朗の年齢を考えると、怪演と言うべき迫力だ。ただ、脚本は現代向けに少し変えてよかったと思う。床を使い、上のフロアからも楽しめる演出は、田尾下哲ならではである。しかし、残念ながら、劇場の3階は見切り席だった。アメリカのミュージカルのように、こうした座席は格安の値段にすべきだろう。
2016/01/09(土)(五十嵐太郎)
横浜にぎわい座十二月・正月興行連続公演「年末年始志ん輔三昧」年始の会
会期:2016/01/09
横浜にぎわい座 芸能ホール[神奈川県]
久しぶりに野毛に寄って、横浜にぎわい座へ。古今亭志ん輔、古今亭駒次ら、三人が出演したが、落語は初心者に対しても、笑えるかどうかという判断から、うまいかどうかがわりと簡単に感じられる話芸であり、恐ろしいジャンルだ。なお、この建物のデザインがひどい。エントランスの吹抜けとか、手抜きのデザインである。が、こうした建築のデザインはリテラシーのハードルが高く、一般の人はあまり気づかないのだろう。
2016/01/09(土)(五十嵐太郎)
成田国際空港第3ターミナル(LCC専用ターミナル)
[千葉県]
竣工:2015年3月
成田空港にて、新しく登場したLCC対応の第三ターミナルに寄る。日建設計ほかがコストをかなり抑えてデザインしたものだが、歩く歩道を敷設できない代わりの陸上トラックのレーン(楽しさ、視認性、耐久性)、くつろげる居場所をつくる什器など、楽しさを感じさせる工夫がいっぱい。2015年のグッドデザイン賞の金賞を獲得したが、大賞候補になってもよかったと思う。
2016/01/04(月)(五十嵐太郎)
オデッセイ、ザ・ウォーク
行き帰りの飛行機で映画を見る。『オデッセイ』は火星に取り残されたマット・デイモンがサバイバルするSFだ。同じ俳優が惑星でひとり過ごすというプロットは、『インターステラー』とも一部重なっているのが笑える。後半は宇宙スケールの展開だが、農業と化学の智恵で生き抜く前半が面白い。なお、映画産業の新しい、そして大きなマーケットとしての中国の存在感が、この映画の終盤でもはっきりと現われていた。『ザ・ウォーク』は世界貿易センタービルの双塔を綱渡りで歩いた男の実話である。以前同じテーマのドキュメンタリー映画はあったが、今回はCGならではの体感映像や消えた建物の再現によって、われわれに奇跡の瞬間を臨場感たっぷりに追体験させる。結果を知っていても、いかに計画し、準備するかという銀行強盗映画的な面白さがあり、WTCが愛おしく思える建築映画でもある。また綱渡りが最高のアートとしての身体表現だと教えてくれる。
2016/01/03(日)(五十嵐太郎)