artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
アウトシュタット
[ドイツ、ヴォルフスブルク]
車の街につくられたアウトシュタットは、クルマのテーマパークというか、未来的なパヴィリオンが並ぶ万博会場のようだった。やはり透明な円筒の双塔となったカータワーが圧巻である。想像以上の高速で自動車を出し入れ、上下に移動させる機械仕掛けの実演が度肝を抜く。また、建築としては、水面にはり出すニーマイヤー、あるいはザハ風のポルシェ館が優れていた。
写真:左=カータワー、右=ポルシェ館。水面に張りだした屋根の下
2015/09/20(日)(五十嵐太郎)
ザハ・ハディッド《ファエノ科学センター》
[ドイツ、ヴォルフスブルク]
竣工:2005年
ヴォルフスブルクへ。駅前広場に面するザハ・ハディドによる《ファエノ科学センター》は、持ち上げた流動的なヴォリュームを支える脚部の隙間から各方向へのヴィスタを確保している。ランドスケープ・デザインとも一体化した建築だった。内部は巨大なほぼワンルームだが、科学系の装置だと空間の演出は難しそう。展示自体はかなり面白いが。
2015/09/20(日)(五十嵐太郎)
ベルンハルト・ハンス・ヘンリー・シャロウン《ベルリン・フィルハーモニー》
[ドイツ、ベルリン]
竣工:1963年
ハンス・シャロウンの《フィルハーモニー》へ。内部に入るのは初めて。有機的な造形という意味では昨年訪れたアアルトの《フィンランディア・ホール》を想起させるが、もっと飾り気のないソリッドな空間である。ワインヤードの形状がホワイエにも反映し、一見複雑だが、エリア分けを示すアルファベット一文字のサインをたどると、スムーズに座席に着く。通常はいつも満席だが、風変わりなプログラムのおかげで、ベルリンフィルを聴くことができた。冒頭が映画「サイコ」の浴室における殺人シーンで有名なバーナード・ハーマンの曲である。一斉に弦楽器群が切り裂き音を奏でる箇所は、パーフェクトなピッチで音が澄み、まさに鋭いナイフだった。次曲が特に断片化の著しいシェーンベルグである。そして、ツインドラムが印象的なニールセンの四番で最後を飾る。
2015/09/19(土)(五十嵐太郎)
絵画館(文化フォーラム内)
[ドイツ、ベルリン]
ドイツを中心にヨーロッパ各国の作品を陳列する。パリ、ウィーン、ロンドンの目玉美術館に比べると、やや物足りないが、それでもかなりのヴォリュームで、同時代の諸国比較の勉強になる。ただし、中心部での次回企画展設営の関係のようだが、U字の順路で同じルートをまた、そのまま帰る動線には閉口した。
2015/09/19(土)(五十嵐太郎)
I.M.ペイ《ドイツ歴史博物館展示ホール》
[ドイツ、ベルリン]
竣工:2004年
I.M.ペイが新棟を手がけた《ドイツ歴史博物館》は、ちょっとクラシックだけど、ガラスと石の表情は安定感がある。展示室も、幾何学ルールをもとにつくられており、変則的な空間だったが、これを逆手にとった1945年展の会場構成が見事である。始点から各方向に進むと、ドイツのナチス政権が西欧各国に与えた惨禍をさまざまな資料とともに振り返る。日本だと、この内容の展示はすぐにクレームが来て、できそうにない。
2015/09/19(土)(五十嵐太郎)