artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
安藤忠雄《新潟市立豊栄図書館》《新潟市立葛塚中学校》
[新潟県]
竣工:2000年、2004年
安藤忠雄の《豊栄図書館》を再訪した。アスプルンドを彷彿させる円と正方形を組み合わせた幾何学的な空間でコンパクトにまとめる。同じく安藤による《葛塚中学校》は、運動場に対して円弧が大きく展開し、外からスタジアムのようにも見える。V字柱は《フォートワース美術館》を想起させる。
上から、《豊栄市立図書館》外観、同内観、《葛塚中学校》遠景、同外観
2015/08/11(火)(五十嵐太郎)
水と土の芸術祭2015
会期:2015/07/18~2015/10/12
4つの潟及び市内全域[新潟県]
水と土の芸術祭、ドットアーキテクツの《潟の浮橋》へ。ゆらゆら体感する強烈な体験だった。SHELTER Project GOZU-NSの《TINY HOUSE》は、資源活用による、ジブリに出てくるような童話的な家である。
水と土の芸術祭は、まさに潟をめぐる旅だった。坂道はないが、駐車場から結構歩く。やはり、建築ディレクターとして曽我部昌史が入っているので、彼の人脈に連なる建築系の参加者が多い。各地の作品、サイトスペシフィックなテーマによく応え、周囲の建築見学もついでにできるのが魅了だ。
上=ドットアーキテクツ《潟の浮橋》、下=PROJECT GOZU-NS《TINY HOUSE》
2015/08/11(火)(五十嵐太郎)
青木淳《水の駅 ビュー福島潟》《遊水館》
[新潟県]
竣工:1997年
久しぶりに青木淳による水の駅、《ビュー福島潟》と《遊水館》を訪問した。《ビュー福島潟》は、螺旋状の径路をたどりながら、周囲の潟を眺める明快なコンセプトだが、きわめて高度な造形の操作と複雑な空間が立ち上がり、なおかつかわいい。隠れポストモダンの傑作である。《遊水館》は、《ビュー福島潟》と同一の円形、構成、仕上げ、かわいさを共有しつつ、プールならではの楽しげな空間を実現した。青木は、センスと知的、両方の資質を備えた建築家である。
上=遊水館、中=潟博物館外観、下=潟博物館内観
2015/08/11(火)(五十嵐太郎)
水と土の芸術祭のベースキャンプ(旧二葉中学校)
[新潟県]
各教室で潟をテーマにした作品を設置する。建築系では、歴史家の倉方俊輔による仏壇リサーチと、アトリエ・ワンのドローイングなど。アートはイ・スギョンの陶片再構成の作品、そして特に新潟と東京の関係を考える吉原悠博の《培養都市》の映像が素晴らしい。
そして学校を出て、潟めぐりに繰り出す。上堰潟エリアでは、上に乗るとゆらゆら揺れる藤野高志のアーチと、水辺に入る体験が新鮮な驚きをもたらす、土屋公雄APTの《海抜ゼロ》。佐潟エリアでは、搭状の構築物になったアトリエ・ワンの観測舎。いずれも自然がつくり出した潟というランドスケープが圧倒的な存在感だ。鳥屋野潟エリアへ。金野千恵の《山から海へ旅するカフェ》は、師匠のホワイト・リムジン・屋台に比べると、プリミティブ・ハットに近い大胆で荒々しい構造物である。大矢りかの《田舟で漕ぎ出す。》は、ひとりで制作し、内側に小さな田を抱えた舟が潟を向く。
左上から倉方俊輔の展示、アトリエ・ワンのドローイング、藤野高志の作品、金野千恵の作品。右上から吉原悠博《栽培都市》、土屋公雄APT《海抜ゼロ》、アトリエ・ワンの観測舎、大矢りか《田舟で漕ぎ出す》
2015/08/10(月)(五十嵐太郎)
リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展
会期:2015/07/19~2015/09/23
新潟市美術館[新潟県]
学部のとき、高階秀爾の美術史の講義で詳しく学んだことを思い出す。精緻な描写と非現実的な世界観を特徴とするが、19世紀中頃に始まり、印象派、キュビスムに向かうフランスの動向とは別に、21世紀初頭にもこの傾向を続けていた。
新潟市美術館が30周年ということで、常設展示では設計した前川國男と、グラフィックデザインでアイデンティティを与えている服部一成を紹介する。道路向かいの西大畑公園も前川によるもの。建築家への敬意を感じる冊子もあって喜ばしい。ただし、後期の前川作品として、ベストの建築とは言えないと思った。
上=新潟市美術館、下=西大畑公園
2015/08/10(月)(五十嵐太郎)