artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
「たよりない現実、この世界の在りか」展
会期:2014/07/18~2014/08/22
資生堂ギャラリー[東京都]
銀座の資生堂ギャラリーで開催された、目の「たよりない現実、この世界の在りか」展が面白い。普段この場所がどういう状態かを知っている人ほど、その変貌ぶりに驚愕するような空間になっていた。いつもの入り口を降りると、階段がすでに配管がむきだしの工事現場のような状態に変わり、たどりつくとホテルの廊下が出現し、我が眼を疑う。基本邸には躯体に手を加えているわけではなく、インテリア・デザインなのだが、建築と切り離して、内装と表層のもちうる力を再認識する。
2014/08/02(土)(五十嵐太郎)
公益財団法人 目黒寄生虫館
目黒寄生虫館[東京都]
前々から訪れようと思いながら、機会がなく、美術館の近くにあることを思いだし、ようやく目黒寄生虫館に足を運ぶ。なんと開館してから60年の歴史がある。人や動物の身体が生育環境になっているからとはいえ、なにか、こう直感的におぞましいと感じる寄生虫の形態は何故なのだろう。気持ち悪さと恐ろしさを喚起する『エイリアン』のデザインは、このイメージを参照していることがよくわかる。
2014/08/02(土)(五十嵐太郎)
ジョージ・ネルソン展─建築家、ライター、デザイナー、教育者
会期:2014/07/15~2014/09/18
目黒区美術館[東京都]
ヴィトラからのコレクションだけあって充実した内容である。イームズに通じるミッドセンチュリーのテイスト満載だが、冷戦下におけるソ連のアメリカ博の展示デザイン、ハーマンミラーでのディレクター、プレハブ建築の思想など、デザインから建築を横断する幅広い活動を紹介している。とくにネルソンの事務所の受付嬢が当時のエピソードを回想する逸話のアニメ化が魅力的だった。
2014/08/02(土)(五十嵐太郎)
思い出のマーニー
映画『思い出のマーニー』(監督:米林宏昌、製作:スタジオジブリ)は想像以上に良かった。あまりジブリに出てこない、こじれた女性の主人公が療養の地で体験する奇譚であり、一夏の成長物語になっている。そして鍵となる水辺の幻想的な湿っ地屋敷も、存在感を放つ重要な登場キャラだ。とくに窓辺に哀しげにたつマーニーの姿が印象的であり、窓映画といえる。心に残る細かい意匠設計は、映画美術の種田陽平が手がけたものだ。
2014/08/01(金)(五十嵐太郎)
GODZILLA ゴジラ
映画『ゴジラ』(監督:ギャレス・エドワーズ)を鑑賞する。しばしば酷評される1998年のハリウッド版の爬虫類的ゴジラも文化的な誤読として興味深かったが、今回は畏怖すべき自然の象徴として描く。原発事故、情報隠蔽も交え、現代的なテーマを組み込んでいるが、怪獣ムートーの出番が多過ぎかもしれない。暗がりのなかで出し惜しみしながら、全体をあまり見せない戦闘シーンは印象的だった。トランスフォーマーが晴天のもと、うんざりするくらい超速で変形バトルが延々と続くのとは対照的である。直接すぐに見せない、引張って引張っての演出は、途中、なかだるみもなくはないが、ゴジラの聖性を高めている。やはり1954年の第一作がベストだとは思うが、これだけのクオリティのゴジラをハリウッドでつくられると、もう日本で制作することは今後難しいかもしれない。
2014/08/01(金)(五十嵐太郎)