artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

ヨコハマトリエンナーレ2014「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」

会期:2014/08/01~2014/11/03

横浜美術館[神奈川県]

仙台からヨコハマトリエンナーレ2014の内覧会に向かう。コンセプトを重視しつつ、ディレクターの森村泰昌の好みを充分に反映した、しっかりした大きな展覧会に仕上がっていた。美術館がメインとなるヨコハマトリエンナーレに比べると、街なか展開や祝祭性も求める、あいちトリエンナーレとの違いが改めてよくわかり、それぞれの位置が明確になったように思われる。ヨコハマトリエンナーレ2014は、物故作家や過去作も多く、全体的に渋いセレクションだが、なぜこれらの作品が選ばれたのかはよくわかる。「華氏451の芸術」というテーマは、決してレトロスペクティブなものではなく、むしろ現在的で、急速に社会が変わっていく日本の現状に対し、大きなメッセージをもちうるはずだと感じた。


展示風景 手前からMoe Nai Ko To Ba《Moe Nai Ko To Ba》、エドワード&ナンシー・キーンホルツ《ビッグ・ダブル・クロス》


展示風景 展示風景 ドラ・ガルシア《華氏451度 1957年版》


展示風景 Temporary Foundation《法と星座 Turn Coat/Court》


展示風景 ヴィム・デルボア《低床トレーラー》

2014/07/31(木)(五十嵐太郎)

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《如風庵》、《凱風館》

[兵庫県]

光嶋裕介の案内により、中島工務店神戸支店にて、建築模型を見学した後、竣工間近の《如風庵》の現場を訪問した。久住有吉による左官の仕事が光る、うねる大きな壁が印象的な住宅である。いわゆる抽象的な白模型ではなく、多彩な素材感と人の動きを細かく、ていねいに見せる模型だったが、実際の建築もそれを強く意識したデザインになっており、多様な場面の展開と手触り感の強い住宅である。その後、住吉に移動し、光嶋が手がけた、内田樹の自邸兼道場の《凱風館》を見学する。大きなヴォリュームを小さな屋根の単位で分節しながら、それぞれの場にいろいろな素材を配して、異なる空間をつくる。一方、1階奥の道場は中心軸の通った大空間だ。合気道、麻雀、寺子屋など、パブリックな場として活躍する開かれた家である。


《如風庵》


光嶋裕介《凱風館》


光嶋裕介《凱風館》模型

2014/07/28(月)(五十嵐太郎)

倉敷市街、大原美術館、《有隣荘》、《林源十郎商店》、いがらしゆみこ美術館

[岡山県]

倉敷は実に10年ぶりの訪問であり、前回に訪れたチボリ公園は閉鎖され、跡地にショッピングモールやアウトレットパークの商業施設が出現した。これはとても今風の変化である。一方、美観地区はさらに江戸後期風のデザインが増え、テーマパーク化が進む。より本物に近いテーマパークが求められたということか。また大原美術館の展示コレクションを久しぶりに見学し、エル・グレコやジャクソン・ポロックなど、早い時期によくこれだけ集めたものだと感心させられた。また最近は日本の現代美術を、レジデンスプログラムや《有隣荘》の期間限定展示などを通じて積極的にとりあげる。大原美術館の向かいにある《有隣荘》(1928)を見学したが、大胆な和洋中の折衷というか、併置のデザインが印象的だった。ともあれ、倉敷の街並みは歩いて楽しい空間になっており、コスプレ好きの人も来るという。《林源十郎商店》は、古建築を再生し、倉敷生活デザインマーケットとして賑わいの場になっていた。いがらしゆみこ美術館も、コスプレ記念撮影の場となっていたが、肝心の展示は倉敷の風景を書き下ろしで描いたシリーズ以外、内容は微妙だった。


大原美術館



有隣荘


林源十郎商店

2014/07/26(土)(五十嵐太郎)

第40回大原美術館美術講座 1960年以後の芸術・建築

会期:2014/07/26~2014/07/27

倉敷アイビースクエア オパールホール[岡山県]

倉敷アイビースクエアに向かい、大原美術館の美術講座「1960年以後の芸術・建築ー万博、モノ派、21世紀へのビッグバン」に出席した。毎年恒例のシリーズであり、地元で楽しみにしているファンが多いことが印象に残る。高階秀爾が大原のコレクションをもとに20世紀の現代美術史、建畠晢が後に大きな影響を与えたパリの「大地の魔術師」展(1989)、李禹煥がもの派、筆者が万博の時代の建築について、それぞれレクチャーを行い、最後に質疑応答を交えて全体討議を行なう。二日間の濃いプログラムだった。

2014/07/26(土)(五十嵐太郎)

《はじまりの美術館》

[福島県]

猪苗代湖に向かい、《はじまりの美術館》を見学した。築120年の古い蔵をリノベーションし、アール・ブリュットの美術館に変えたものだが、美術に閉じることなく、今後は周囲の住民を巻き込む活動を展開するという。オープニング展は、専門的な美術教育を受けていない作家と、いわゆる現代美術家と等しく組み合わせている。建物の設計は竹原義二であり、蔵の中に小さな蔵をつくるような展示室群だ。また縦横の両軸とも、端から端まで、建物を貫通し、向こうの風景まで見える視線の抜けが抜群だ。それにしても、蔵は全長33mもあり、もとの梁のあまりの太さに度肝を抜かれた。



《はじまりの美術館》内部

2014/07/25(金)(五十嵐太郎)