artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから

会期:2014/05/31~2014/07/27

宮城県美術館 本館展示室3・4[宮城県]

宮城県美術館にて、手治虫と石ノ森章太郎の二人を比較する「マンガのちから」展を見る。去年の東京都現代美術館ですでに訪れたので、二度目だ。言うまでもなく、この二人は、映画などの影響を受けつつ、漫画の文法やジャンルを創造した。展示ではトキワ荘が3/4で再現されている。そのせいもあるかもしれないが、室内の畳の上の机が、座って使うタイプのものとはいえ、おそろしく低い。漫画家の身体スケールを正確に知りたいのだが、内部も3/4なのだろうか。ところで、宮城県美でサブカルチャー系の展示はめずらしいが、石ノ森が宮城県の出身だからなのかもしれない。ちなみに、手は1928年生まれで槇文彦、石ノ森は1938年生まれで渡辺豊和と同じ年だ。いかに漫画家が早熟なのかがよくわかる。

2014/06/27(金)(五十嵐太郎)

せんだいスクールオブデザイン メディア軸♯5 ディスカッション+祐成保志

会期:2014/06/25

東北大学片平キャンパス都市建築学専攻仮設校舎SSDプロジェクト室2[宮城県]

SSDのPBL3メディア軸の新しい建築ガイドをつくるスタジオで、講師の磯達雄、星裕之らの受講生とともに二度目のフィールドワークを行なう。定禅寺通りの山下寿郎による東京エレクトロンホール宮城(県民会館)から出発したが、仙台市役所や藤崎百貨店も同じ設計者によるものだ。今回は街区よりも小さいマイクロ・ブロックの単位で、普段は素通りするような普通の建物も詳細に観察することを心がけ、スローウォーク並みにゆっくりとしか、通り沿いに移動できない。が、そこに1960~80年代から現在のデザインが積層し、50年代の記憶も見つかるのは興味深い。とくに竹中工務店が設計した黒い仙台第一生命ビルや、岡田新一が手がけた鹿島建設東北支店は、1970年頃に出現したカッコいい建築だった。

2014/06/25(水)(五十嵐太郎)

素顔のブラジル展

会期:2014/06/13~2014/09/15

無印良品有楽町2F ATELIER MUJI[東京都]

有楽町・無印良品の「素顔のブラジル」展は、膨大な写真と現地の小物のディスプレイによって、生活と日常のデザインを紹介する。展示台や天井の布などの会場デザインは、CAt+安東陽子らが担当し、ぐにゃぐにゃしたフォルムのテーブルは、オスカー・ニーマイヤーが関わったイビラプエラ公園内のかたちを縮小したものだ。関連企画のトーク「ブラジルの引力アート、デザイン、建築、都市」を、ちょうどブラジル特集を刊行した『カーサ・ブルータス』の編集者、白井良邦と行う。筆者と彼の組み合わせは、東京国立近代美術館の「ブラジル:ボディ・ノスタルジア」展(2004年)のブラジリアをめぐるトーク以来だから、10年ぶりになる。今回、ブラジルの社会・建築・芸術の流れをまとめたが、1936年からの教育保健省は重要なプロジェクトだったことがわかった。ルシオ・コスタがル・コルビュジエを招聘し、ニーマイヤーらが設計に関わったからである。これはモダニズムを伝統化し、「食人宣言」のように飲み込んだブラジル建築の近代の出発点と言える。

2014/06/23(月)(五十嵐太郎)

ノア 約束の舟

もうひとつ歴史ものの映画『ノア』は、神との約束か、人間の意志かをめぐる激しい葛藤の物語だった。神を信じない人にとっては、人間に対するノアの言動が怖すぎるだろう。世界最初の動物園というべき、ノアの箱船は、133m×22m×13mの直方体で、三階建の木による構造物だった。船というよりは、海に漂う巨大な箱である。でも、動物はずっと眠らされていた。全体的に映画の尺がちょっと長過ぎかもしれない。

2014/06/22(日)(五十嵐太郎)

ポンペイ

映画『ポンペイ』を見る。廃墟の遺構が残るだけに、建築の表現は、垂直性を強調した『グラディエーター』や『テルマエ・ロマエ』に比べても、基本的にはちゃんとしているのだが、災害と破壊の描写はスペクタクル感をだすためだろうが、派手過ぎだった。いくらなんでも、あそこまでの津波はないのではと思う。また闘技場以外の普通の生活空間をもっと見たかった。例えば、都市住宅における2つの中庭アトリウムとペリスタイル、集合住宅のインスラなど、そうした場所を生き生きと描いて欲しかった。

2014/06/22(日)(五十嵐太郎)