artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
スリーピング・ビューティー
会期:2014/05/17~2014/07/21
広島市現代美術館[広島県]
コレクションを活用しながら、美をテーマに古今東西の現代美術の作品を紹介する展覧会。冒頭はイブ・クラインなどだが、田口和奈の新作など、後半のセレクションは若手が多い。岩崎貴宏による金閣や銀閣など、水に映る古建築の実体とイメージの両方を模型化する作品は労作だ。
2014/07/06(日)(五十嵐太郎)
戦後日本住宅伝説ー挑発する家・内省する家
会期:2014/07/05~2014/08/31
埼玉県立近代美術館[埼玉県]
埼玉県立近代美術館にて、筆者が監修で関わった「戦後日本住宅伝説」展が無事スタートする。館長の建畠晢氏が、だいぶ前からやりたいと語っていた念願の企画であり、ついに実現した。おそらく「公立」の「美術館」で、これだけの規模の住宅展は、しばらくなかったであろう。しかも丹下健三から安藤忠雄、伊東豊雄まで、1950~70年代の黄金期に焦点をあてたものは初めてだから、貴重な機会と言える。北海道、東北、関東、東海、沖縄の各大学の研究室で制作した1/30と1/50の住宅模型(各作品の大きさを比較できる)、オリジナルの図面のほか、大きく写真を伸ばしたタピスリーや《塔の家》の1/1プランによって、空間を体感できる仕かけを設けた。また黒川紀章による《中銀カプセルタワー》のカプセルの実物が、美術館のある公園内にすでに移築されている。各住宅の映像資料(昔のドキュメントや撮り下ろしなど)もあり、それを全部鑑賞すると、かなり時間がかかるだろう。埼玉の後は、広島現代美術館(10/04~12/07)、松本市美術館(2015/04/18~06/07)、八王子市夢美術館(2015/06~2015/07)に巡回する予定。
2014/07/05(土)(五十嵐太郎)
《新潟市秋葉区文化会館》、《新潟市江南区文化会館》
[新潟県]
新津にて、新居千秋による《新潟市秋葉区文化会館》を見学する。スタジアムの跡地につくられたホールであり、その記憶を残すかのように、丸い輪郭をもつ。ぐるぐる屋上のスロープを歩いて登る体験も楽しい。大きな外皮の内部に、コンクリートの壁と天井のホールが入る。ホワイエで天井を見上げると、踊るようにねじれた壁柱がダイナミックだ。未来的な造形からコスプレの人たちが集まる場にもなっているという。隣接する学校の体育館は工事中だが、これも新居のプロジェクトである。続いて、同じく新居による《新潟市江南区文化会館》に向かう。街並みのような十字のストリートを軸に、ホール、公民館、郷土資料館、公民館を複合するプログラムだ。由利本荘のケースと同様、点在していた諸施設をコンパクトにまとめる役割も担う。が、その造形と空間は必ずしもシンプルではなく、冗長性と多様性をもつ。力強い造形と各部の透明感ある相互浸透が、デザインの特徴である。
2014/07/04(金)(五十嵐太郎)
《由利本荘市文化交流館カダーレ》
[秋田県]
秋田の《由利本荘文化交流館カダーレ》を訪問した。物産館も備え、新居千秋がワークショップを繰り返しながら設計した《リアスホール》の発展形となるプロジェクトである。《リアスホール》に比べると、平地にあるため、ホールと図書館が、屈曲する街路的な廊下で向きあい、後者の上にシンボリックなお椀=プラネタリウムがのる構成だ。またホールは演目にあわせて、さまざまに変形するだけでなく、前後の空間と連結することができ、建物全体が通り抜け可能となる。また地域の使い手が自主的に制作している建物紹介の映像も興味深い。《カダーレ》は駅前からも見えるシンボル性をもつが、その一方で正面性をなくすような、ぐにゃっとした輪郭をもつ。これは曲がった道路から決まったのかと思いきや、むしろ用途を複合させるべく、建築家サイドからの提案で道の位置を変えたものらしい。
2014/07/03(木)(五十嵐太郎)
開館40周年記念「1974 第1部 1974年二生マレテ」
会期:2014/06/28~2014/08/24
群馬県立近代美術館[群馬県]
高崎に向い、群馬県立近代美術館が開館40周年ということで、同年に生まれたアーティストによる「1974年ニ生マレテ」展を見る。時間を想像させる宮永愛子と春木麻衣子、建築との対話を行なう土屋貴哉や末永史尚の作品、幼少時の絵がすごい水野暁など、それぞれに楽しめたが、個人的にヒットは小林耕平だった。小林によるモノの関係性、形と機能、意味と記号のスタディを錯綜させながら展示するインスタレーションは、キャプションを追いかけて、部屋をあちこち移動しながら見ることが要請される。そして美術館の随所に設置された、小林と山形育弘が絶妙の間で繰り広げるシュールなトーク、《ゾ・ン・ビ・タ・ウ・ン》のシリーズ映像は抱腹絶倒だった。去年、あいちトリエンナーレで何度も岡崎を訪れたが、いつも業務で忙しく、結局、岡崎市美術博物館に行き損ね、そのとき《ゾ・ン・ビ・タ・ウ・ン》を見逃している。二階の群馬県立近代美術館のコレクション展示では、所々に企画展の作品が侵入しつつ、群馬青年美術展と群馬青年ビエンナーレ1976-2012の優秀作や大賞によって、40年の歴史を振り返る(毎回の審査委員も明記)。こうして通して見ると、作家の個性を超えて、やはり時代性が刻印されているのが興味深い。
2014/06/28(土)(五十嵐太郎)