artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
工藤和美《金沢海みらい図書館》
金沢海みらい図書館[石川県]
金沢へ。昨年はまさかの水曜休館で外観のみしか見ることができなかった、工藤和美が設計した金沢海みらい図書館をようやく再訪した。内部は、無数の小さな丸窓に覆われたキュービックな大空間の吹抜けである。天気もよかったが、大開口なしでも、明るくて気持ちがいい。丸窓は船のイメージもあるだろう。交通量が多い道路に面した敷地は、外と積極的に交流する周辺環境ではなく、内部に豊かな外部的環境をつくる。
2014/05/16(金)(五十嵐太郎)
収容病棟
ワン・ビン監督のドキュメンタリー映画『収容病棟』を見る。中国の精神病院の「日常」を撮影したものだが、この題材で許可をとれたことに感心する。そして被写体との絶妙な距離感も興味深い。前編・後編あわせて4時間という長尺だが、この長さだからこそ、閉ざされた空間で、日々繰り返される生活への没入と想像に導く。『収容病棟』の建物では、相部屋以外だと、ほとんどの時間をテレビのある談話室か、中庭を囲む、格子のある回廊を歩くしかない。3階が男性、2階が女性、1階は食事(ただし、みな立ち食いしていた)。食事、排泄、睡眠という基本行為だけを満たす、機能主義/モダニズムを突き詰めたシンプルな空間である。しかしながら、『収容病棟』の建物では、制限された区域内の自由が保証され、会話、ケンカ、いたわりあい、恋愛さえ(3階と2階のあいだで)起きている。フィクションで描かれる精神病院のイメージとは違い、人間としての生活があり、人生の装飾を剥いで、シンプルにした分、塀の外の社会の生涯をより濃縮したようにも見える。
2014/05/07(水)(五十嵐太郎)
イメージの力──国立民族学博物館コレクションにさぐる
会期:2014/02/19~2014/06/09
国立新美術館 企画展示室2E[東京都]
国立新美術館の「イメージの力」展へ。国立民族学博物館コレクションを使い、ケ・ブランリのように、アート的に見せる。それにしても、民族の違いを超えて、人類が同じく仮面を共通に用いながら、その造形は驚くほどに多様だ。展示の後半における現代のハイブリッド化も刺激的(飛行機の棺桶とか、兵器を素材にしたオブジェなど)である。
2014/05/05(月)(五十嵐太郎)
森美術館10周年記念展 アンディ・ウォーホル展 永遠の15分
会期:2014/02/01~2014/05/06
森美術館[東京都]
森美術館の「アンディ・ウォーホル展」は混んでいた。顔などの具象的イメージは機械化された技術=写真を使うが、鮮やかな色彩構成やズレる輪郭などの抽象的な表現は、手の痕跡が強く残るという、20世紀初頭の絵画とは違う方法による具象と抽象の組み合わせが魅力的だ。そして60年代は、メディアがカラー化した時代で、それがよく反映されている。
2014/05/05(月)(五十嵐太郎)
MOTコレクション 第2部クロニクル1966──|拡張する眼
会期:2014/02/15~2014/05/11
東京都現代美術館 常設展示室1階、3階[東京都]
常設展示のMOTコレクション「第2部 クロニクル1966──|拡張する眼」は、篠原有司男のインテリア・デザインから始まり、磯崎新が関わった「空間から環境へ」展や映画「他人の顔」、そして吉村益信のホワイトハウスのことなども展示され、60年代のジャンル横断の雰囲気が楽しめる。建築の側からも興味深い内容だった。
2014/05/05(月)(五十嵐太郎)