artscapeレビュー
五十嵐太郎のレビュー/プレビュー
中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス 藤本壮介《Toilet in Nature》
会期:2014/03/21~2014/05/11
千葉県飯給駅[千葉県]
建築では、藤本壮介の《Toilet in Nature》が強烈だった。なにしろ、隣接する飯給駅の駅舎やホームよりも、トイレの方がデカい。それどころか、車両よりも大きい面積だ。既存の樹木を囲む、大きなリングの中に、ぽつんと透明なボックスに入ったトイレをひとつ置く。まさに自然の中のトイレである。彼らしいユーモアを感じるデザインだ。
2014/05/02(金)(五十嵐太郎)
中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス
会期:2014/03/21~2014/05/11
千葉県市原市南部地域[小湊鐵道上総牛久駅から養老渓谷の間]、中房総エリア[茂原市、いすみ市、勝浦市、長柄町、長南町、一宮町、睦沢町、大多喜町、御宿町][千葉県]
いちはらアート×ミックスをまわる。南端の養老渓谷駅から北上したが、小湊鉄道を積極的に使うコンセプトゆえか、クルマでまわると、駐車料金が相当かさむのが辛い。市原湖畔美術館と旧里見小学校の作品が良かった。ベストは月崎駅の木村崇人による《森ラジオ ステーション》である。駅員の詰所を改造した、緑に覆われた奇蹟の空間だ。スマイルズのわっぱやAAAのCamp!など、食も楽しめる。越後妻有に比べると、全体のエリアは小さく、思ったよりもコンパクトにまわることができる。ただ、電車とバスですべて乗り継ぐと、それはそれで大変そう。なお、各駅舎や電車はかわいらしく、見る価値はあった。
2014/05/02(金)(五十嵐太郎)
今井兼次+千葉学《大多喜町役場庁舎》
[千葉県]
千葉の大多喜町役場へ。50年以上前に建てられた今井兼次による空間は、彼特有の装飾性や重さも組み込みながら、軽快なモダニズムのテイストをあわせもつ。そして千葉学による改修と増築は、もとの建物をリスペクトしており、その軸線をうまく引き出しながら、現代的な明るい大空間につなぐ。ここで天井に現れる斜めの線がまた効果的である。
2014/05/02(金)(五十嵐太郎)
レイルウェイ 運命の旅路
『レイルウェイ 運命の旅路』は、いま日本で上映される価値のある作品だった(邦題がダサいので損をしているが)。戦時中に日本軍の捕虜となり、虐待されたイギリス兵の強制労働による鉄道建設は、『戦場にかける橋』でも有名だが、その半世紀後の史実を描く。負の記憶に向きあうこと、敵と罪への赦し、そしてダークツーリズムをめぐる本作のテーマは重厚である。ただし、拷問された英兵と、当時の日本人通訳が戦後に再会するこの映画を、原作の書籍と比較すると、物語や場面を脚色したシーンも少なくないようだ。映画なりのドラマを演出しているが、実話の映画向けではない部分も、別の意味での凄みがある。現実はもっと複雑で数奇なのだ。ところで、『戦場にかける橋』の原作者ピエール・ブールは、戦時中日本軍に捕まった経験をもち、『猿の惑星』も書いている。そうなると、人間を支配する猿とは、西洋人を虐げた日本人のことを意味していたのではないか。
2014/05/01(木)(五十嵐太郎)
『アナと雪の女王』『ミッキーのミニー救出大作戦』
『アナと雪の女王』を見る。もちろん、大ヒットしているように、歌は良いのだが、氷や雪のアニメ表現で、ここまで描くことができることを示したマイルストーンだ。女王の戴冠式が、木造のゴシック空間になっているのは、ちゃんと北方的な建築のテイストである。そしてエルサがつくる氷の城は、表現主義のタウトやシェーアバルトらが構想したクリスタルのユートピアに通じるだろう。美術表現も楽しめる映画だった。今回、いつも期待を裏切らないディズニーの短編は、『ミッキーのミニー救出大作戦』だが、画面を飛び出し、3Dでカラーになったミッキーよりも、2Dのまま白黒で動くミッキーの方が魅力的なキャラに見えるのは興味深い。もっとも、日本のアニメのように目が大きいアナやエルサは、3Dでもキャラに感情移入させている。
2014/05/01(木)(五十嵐太郎)