artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

神奈川県立音楽堂、神奈川県立図書館

[神奈川県]

久しぶりに、前川國男による神奈川県立音楽堂と神奈川県立図書館を訪れた。この頃のモダニズムのデザインは、心を洗われるようで、見ていて清々しい。遠くに巨大な横浜ランドマークタワーが見えるのが、対照的だ。開館当時の60年前は、そう感じられなかったのかもしれないが、いまの大型施設やビルに比べて、スケールも小さくてかわいらしい。いまも現役で活躍しているが、将来も是非ちゃんと残して欲しいモダニズム建築である。

2014/01/28(火)(五十嵐太郎)

日常/オフレコ

会期:2014/01/11~2014/01/30

KAAT 神奈川芸術劇場[神奈川県]

KAATの「日常/オフレコ」展へ。普段は劇場として接している中スタジオが、展示スペースに変貌した。控室、シャワー、搬出入口など、通常は入ることができないバックヤードにも作品が点在し、めぐることで空間の体験を楽しめる。モノの表皮を削る青田真也のピアノやレコード、八木良太の音と映像のインスタレーション、被災した工場をアニメでトレースする佐藤雅晴、漆黒の巨大日本画による梶岡俊幸のインスタレーション、天井から大量のドアを吊るす安藤由佳子。5名のアーティストが、劇場のあちこちのスペースを巧みに使い、KAATの日常を読み替え、知られざる場を白日のもとにさらす。

2014/01/28(火)(五十嵐太郎)

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シンポジウム「震災後の芸術と環境、東北の未来」

早稲田大学文学部33号館3階第1会議室[東京都]

早稲田大学のシンポジウム「震災後の芸術と環境、東北の未来」に登壇する。第一部の基調講演は、東北学の赤坂憲雄が、岡本太郎による太陽の塔を事例に挙げながら、妄想をキーワードに、無用・無償であるがゆえのアートの可能性を指摘し、震災後に行なわれるみちのくアート巡礼88ヶ所の夢を語る。第二部では、五十嵐が震災後の芸術と建築、あいちトリエンナーレ、相馬千秋が震災後の3回のフェスティバル・トーキョーの内容を紹介した。第三部のディスカッションでは、宗教的なものの可能性が話題になった。

2014/01/26(日)(五十嵐太郎)

せんだいスクール・オブ・デザイン 2013年度秋学期 Interactiveレクチャー♯3 新津保建秀「フレーム/余白/写真」

東北大学大学院工学研究科 せんだいスクール・オブ・デザイン[宮城県]

仙台にて新津保建秀のレクチャーが行なわれた。ももクロや戸田恵梨香の人物から建築、風景、チェルノブイリの取材まで、幅広い領域に及ぶ写真の活動は、共通点がなさそうだが、実は一貫して対象の余白を意識した作品である。つまり、撮影した瞬間の前後、情報がタグ付けされた世界、モニター上の画像、データベースのアーカイブ、双方向的なネット・コミュニティ、撮影者の周辺状況を組み込み、現代における写真の可能性を拡げる。

2014/01/23(木)(五十嵐太郎)

仙台文学館

[宮城県]

『S-meme』の次号で取り上げる仙台文学館を訪れる。ネオタイド建築計画による池を跨ぐゲート、あるいはブリッジ的なヴォリュームと、円形の吹抜けが、空間の大きな特徴だ。楽天優勝もあり、井上ひさしと野球の企画展を開催中だった。常設展示では、近代から現代までをたどる。文学館は美術館と違い、空間性を生かした作品の展示が難しいが、仙台文学館も展示デザインのテイストをもっと揃えられると、カッコよくなるはずだ。

2014/01/22(水)(五十嵐太郎)